第17回 言語聴覚士国家試験 第106問
小児科学第17回
2歳の男児。転んで頭を強く打ったということで来院した。 硬膜下血腫、上肢骨折、皮下出血痕を多数認めた。対応で誤っているのはどれか。
- 1.栄養状態を評価する。
- 2.家庭環境を確認する。
- 3.受傷時の様子を両親からよく聴取する。
- 4.親に付き添い入院を勧める。 ✓
- 5.児童相談所へ通報する。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 親に付き添い入院を勧める
児童虐待(特に頭部外傷)が強く疑われる本症例では、親の付き添いを許可すると証拠隠滅や更なる虐待のリスクが高まります。むしろ親と児を一時的に分離し、医学的評価と心理社会的評価を安全に進めることが重要です。虐待疑い例では付き添いを制限し、医療スタッフによる24時間監視下での入院が原則です。
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【各選択肢の解説】
1. 栄養状態を評価する。
✅ 正しい。虐待児は栄養不良(身長・体重が年齢に比べて低い)を呈することが多く、虐待の証拠となる重要な評価項目です。医師は虐待の全体像を把握する必要があります。
2. 家庭環境を確認する。
✅ 正しい。虐待背景には貧困・親のメンタルヘルス問題・社会的孤立など複合的リスク因子が存在します。対応方針決定に不可欠な情報収集です。
3. 受傷時の様子を両親からよく聴取する。
✅ 正しい。虚偽の説明(「転んだ」など)や説明の矛盾は虐待の強い示唆となります。小児の発達段階と説明内容の整合性検討も重要です。本症例では「2歳で転んで頭部外傷」という説明と「複数部位の骨折・皮下出血痕多数」という所見の矛盾が虐待を示唆します。
4. 親に付き添い入院を勧める。
❌ 誤り。虐待疑い例では親の付き添いを許可してはいけません。親との分離により、①児の安全確保②医療スタッフによる詳細な身体診察(隠れた損傷の発見)③心理評価が可能になります。付き添いを許可すると証拠隠滅や児に対する口止めのリスクが生じます。
5. 児童相談所へ通報する。
✅ 正しい。虐待の疑いが生じた場合、医療従事者には児童福祉法第25条による通報義務があります。医師の疑いの段階で直ちに通報する必要があり、「確実な虐待」を待ってはいけません。
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【試験対策ポイント】
虐待疑い事例での医療専門職の対応フロー:
1. 虐待の兆候・矛盾検出(複数部位外傷、説明と所見の不一致)
2. 医学的評価(身体診察・画像・血液検査)
3. 社会的評価(栄養状態・家庭環境・親の養育力)
4. 親と児の分離(付き添い禁止・安全な入院管理)
5. 児童相談所への通報(医師の法的義務)
虐待疑い例での禁止事項:
- 親の付き添い入院(証拠隠滅・口止めリスク)
- 虐待の「確実性」を待つこと(疑いの段階で通報)
- 親への直接的な虐待追及(逆恨みリスク)
本症例での虐待示唆所見:
・転倒説明では説明困難な複数部位損傷
・2歳児の発達段階では自力で頭部への複数外傷を負いにくい
・皮下出血痕多数(叩打痕の可能性)
関連法規:
・児童福祉法第25条:虐待通報義務(医師含む)
・虐待の疑いだけで足りる(確実性不要)
・通報は匿名で可能だが、医療現場では通常記録化される