第17回 言語聴覚士国家試験 第139問
音響学第17回
[m]の音響特徴として誤っているのはどれか。
- 1.アンチホルマントが存在する。
- 2.鼻音ホルマントが存在する。
- 3.口腔の共鳴特性が関与する。
- 4.鼻腔と口唇からの音声波が放射される。 ✓
- 5.音源は声門だけに存在する。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 鼻腔と口唇からの音声波が放射される。
[m]は鼻音であり、鼻腔のみからの音声波が放射され、口唇からは放射されません。[m]は両唇を閉鎖して鼻音化させる音であるため、声門で生成された気流と音声は鼻腔経由でのみ放射されます。口唇が関与しないことが、[n]や[ŋ]など他の鼻音との明確な違いです。
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【各選択肢の解説】
1. アンチホルマントが存在する。
✅ 正しい。[m]を含む鼻音には、鼻腔の音響特性により、特定の周波数でエネルギーが低下する「アンチホルマント」(零点)が存在します。これは鼻音の特徴的な音響構造です。
2. 鼻音ホルマントが存在する。
✅ 正しい。鼻音には、鼻腔および副鼻腔の共鳴に起因する「鼻音ホルマント」が存在します。これが[m][n][ŋ]などの鼻音に特有の音色を与える重要な要素です。
3. 口腔の共鳴特性が関与する。
✅ 正しい。[m]は両唇閉鎖時に、閉鎖部位の後方(口腔奥)の共鳴特性が音響に影響を与えます。口腔全体が鼻腔への通路として機能し、その音響特性が音質に寄与します。
4. 鼻腔と口唇からの音声波が放射される。
❌ 誤り。[m]は両唇を閉鎖しているため、音声波は「鼻腔からのみ」放射されます。口唇が閉じている時点で、口唇からの音声波放射は生じません。
5. 音源は声門だけに存在する。
✅ 正しい。[m]を含む全ての有声音は、音源を声門に持ちます。声門で生成された周期的な気流変動が、共鳴腔(この場合は鼻腔)により修飾されて最終的な音が形成されます。
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【試験対策ポイント】
鼻音[m][n][ŋ]の音響特徴比較表:
| 特徴 | [m] | [n] | [ŋ] |
|---|---|---|---|
| 閉鎖部位 | 両唇 | 歯槽 | 軟口蓋 |
| 音声放射 | 鼻孔のみ | 鼻孔のみ | 鼻孔のみ |
| アンチホルマント | あり | あり | あり |
| 鼻音ホルマント | あり | あり | あり |
| 口腔の関与 | 間接的共鳴 | 間接的共鳴 | 間接的共鳴 |
重要な否定知識:
- [m]は「口唇からの放射はない」→これが最大の特徴の1つ
- 鼻音の音源は「声門のみ」(副音源なし)
- アンチホルマント=周波数特性上のエネルギー低下(ゼロに近い周波数)
- 鼻音ホルマント=鼻腔特有の共鳴ピーク(通常200〜400Hz付近)
紛らわしい点:
「口腔の共鳴特性が関与する」と「口唇からの放射」は異なります。口腔は共鳴腔として機能しますが、放射口は鼻孔に限定されるため、4番が誤りになります。