STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第17回 言語聴覚士国家試験 第141問

音響学第17回
両耳聴に関して正しいのはどれか。
  1. 1.最小の両耳間時間差は約9msである。
  2. 2.片耳で聴くより両耳で聴く方が閾値が大きい。
  3. 3.低域では両耳間強度差が方向の手がかりとなる。
  4. 4.壁からの反射音があっても壁に音源があるとは感じない。 ✓
  5. 5.同じ音が左右のスピーカから同時に出てもそれぞれ同じ位置に定位する。

正答:4番

解説
■ 正答:4番 — 壁からの反射音があっても壁に音源があるとは感じない。 これはハース効果(Haas effect)またはプリセデンス効果(precedence effect)と呼ばれる現象を説明しています。最初に到達した直接音(初期音)の方向知覚が優位となり、後続する反射音は定位知覚に影響を与えません。そのため、壁からの反射音のみで聴いても、音源は直接音が来た方向に定位し、壁に音源があるとは感じないのです。 --- 【各選択肢の解説】 1. 最小の両耳間時間差は約9msである。 ❌ 誤り。両耳間時間差(ITD)の最大値が約0.7msです。9msは音が相互変調周波数帯域を通過する時間などまったく異なる文脈の数値であり、両耳聴の手がかりとしてはあり得ない大きさです。 2. 片耳で聴くより両耳で聴く方が閾値が大きい。 ❌ 誤り。両耳聴時の閾値は片耳聴時よりも「小さい」(感度が良い)です。両耳相加効果により、閾値が約3dB低下する(検出感度が約2倍向上)というのが定説です。この選択肢は方向性が完全に逆です。 3. 低域では両耳間強度差が方向の手がかりとなる。 ❌ 誤り。低域(低周波数)では波長が長いため、両耳間強度差(ILD)はほぼ生じません。むしろ低域では両耳間時間差(ITD)が主要な手がかりとなります。高域では頭部が音波に対する相対サイズが大きくなるため、ILDが有効な手がかりとなる逆の関係です。 4. 壁からの反射音があっても壁に音源があるとは感じない。 ✅ 正しい。ハース効果により、初期音(直接音)の方向が優位的に知覚されます。後続する反射音は初期音との時間差が数ms以下であれば融合し、音源定位は直接音の方向に統一されます。これは室内での実用的な利点として機能し、スピーカ位置への誤認を防ぎます。 5. 同じ音が左右のスピーカから同時に出てもそれぞれ同じ位置に定位する。 ❌ 誤り。「同時」に出た場合、両耳間時間差と両耳間強度差がともにゼロ(中央配置スピーカと仮定)となるため、音は「頭部中央」に定位します。選択肢の「それぞれ同じ位置」という表現が曖昧ですが、左右両スピーカから同時出力では融合して単一の中央音源に知覚されるのが正解です。 --- 【試験対策ポイント】 両耳聴の重要概念整理 | 現象・概念 | 説明 | 周波数特性 | |---|---|---| | **両耳間時間差(ITD)** | 左右の耳に到達する時間のズレ(最大約0.7ms) | 低域で有効 | | **両耳間強度差(ILD)** | 左右の耳で受ける音圧レベルの差 | 高域で有効 | | **ハース効果** | 先着音が方向知覚を支配。遅延反射音は融合される | 時間差数ms以下 | | **両耳相加効果** | 両耳聴の閾値は片耳より約3dB低下 | 全周波数 | キーワード - 初期音優位の原理:反射音がいくら強くても、時間的に後れる音は定位に寄与しない - 低域=ITD優位、高域=ILD優位 - 両
関連

▶ 第17回 全問一覧

▶ 音響学 の過去問一覧