第17回 言語聴覚士国家試験 第41問
音響学第17回
音声生成の音響理論で正しいのはどれか。
- 1.声道はフィルタとしての特性を持つ。 ✓
- 2.放射特性の違いが母音の違いを決める。
- 3.声道伝達特性の谷をホルマントという。
- 4.周期的声門体積流波形は時間軸上で対称である。
- 5.ソース・フィルタモデルのソースとは気流のことである。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 声道はフィルタとしての特性を持つ。
ソース・フィルタモデルの根本原理です。声門で生成された周期的な音源(ソース)が、声道という可変形管によってフィルタリングされることで、母音や子音などの音響特性が決定されます。声道の形状(長さ・共鳴腔)が変わるとフィルタ特性が変わり、異なる音声が出現します。
---
【各選択肢の解説】
1. 声道はフィルタとしての特性を持つ。
✅ 正しい。ソース・フィルタモデルの基本です。声門からの音源(周期的流波)が声道(可変管)を通過する際、声道の形状に応じた周波数フィルタリングが起こり、ホルマント周波数が決定されます。
2. 放射特性の違いが母音の違いを決める。
❌ 誤り。母音の違いを決めるのは声道の形状(舌位・唇形)に由来するホルマント周波数です。放射特性(唇から音が放射される際の周波数依存性)は、音響出力全体に影響しますが、母音の本質的な特性(ホルマント)とは異なります。
3. 声道伝達特性の谷をホルマントという。
❌ 誤り。逆です。ホルマントは声道伝達特性の「峰(ピーク)」です。伝達特性グラフで周波数応答が高まる部分がホルマント周波数であり、谷ではなくピークで特性化されます。
4. 周期的声門体積流波形は時間軸上で対称である。
❌ 誤り。声門体積流波形は非対称です。開き時間よりも閉じ時間が短く、かつ開き速度より閉じ速度が速いため、波形の立ち上がりと立ち下がりが異なります。この非対称性が豊かな高次倍音成分を生成します。
5. ソース・フィルタモデルのソースとは気流のことである。
❌ 誤り。ソースは「気流」ではなく「声門で生成される周期的な音圧変動(または音源)」です。気流は音源を生成するための駆動力ですが、ソース自体ではありません。
---
【試験対策ポイント】
ソース・フィルタモデル基本要素
| 要素 | 説明 | 周波数特性 |
|---|---|---|
| ソース(Source) | 声門での周期的音圧変動 | 広帯域(全周波数に均等成分) |
| フィルタ(Filter) | 声道の形状による周波数応答 | ホルマント周波数に周波数ピーク |
| 出力 | 音声波形=ソース×フィルタ特性 | ホルマント周波数が聴こえに支配的 |
ホルマント周波数の位置付け
・ピーク(peak):音響スペクトラムが高い部分
・谷(valley):スペクトラムが低い部分
・母音Aと母音Iは第1・第2ホルマント周波数の位置で識別される
声門体積流波形の特性
・開き相:相対的に時間が長い、ゆっくり上昇
・閉じ相:時間が短い、急速に低下
・非対称性:豊かな倍音を含む高周波成分の根拠