第17回 言語聴覚士国家試験 第56問
高次脳機能障害第17回
純粋失書を呈しうる病変部位はどれか。
- 1.左上前頭回後部
- 2.左中前頭回後部 ✓
- 3.左中心前回上部
- 4.左中心後回上部
- 5.左上側頭回後部
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 左中前頭回後部
純粋失書は「読む能力は保持しつつ、書く能力のみが選択的に障害される」という極めて限定的な症状です。左中前頭回後部(Exner野:Brodmann6野の一部)が書字機能の中心領域であり、この部位の損傷により純粋失書が生じます。読字中枢(角回)は保持されるため、読む能力は温存されます。
---
【各選択肢の解説】
1. 左上前頭回後部
❌ 誤り。この領域はBroca野(Brodmann44・45野)に相当し、損傷すると表出性失語(Broca失語)を呈します。純粋失書ではなく失語症全体の言語能力が障害されます。
2. 左中前頭回後部
✅ 正しい。Exner野(Brodmann6野の一部、中前頭回後部)が書字運動プログラムの中枢です。この部位損傷により、読字・理解・会話は保持されながら、書字のみが選択的に失障します。純粋失書の典型的な病変部位です。
3. 左中心前回上部
❌ 誤り。この領域は一次運動皮質で、手指運動全般を支配します。損傷すると失語ではなく、手指麻痺や運動障害が生じ、二次的に書字困難になるのであって、純粋失書ではありません。
4. 左中心後回上部
❌ 誤り。この領域は一次感覚皮質(手指領域)です。手の感覚喪失が生じますが、純粋失書とは異なります。中心後回損傷では感覚失語(感覚失行)の可能性があります。
5. 左上側頭回後部
❌ 誤り。この領域は言語理解に関わるWernicke野周辺域です。損傷するとWernicke失語や受容性言語障害を呈し、読字理解も障害されるため、純粋失書ではなく全般的言語障害になります。
---
【試験対策ポイント】
純粋失書と関連失語症の部位別鑑別:
| 病変部位 | 症状の特徴 | 読字 | 会話 | 書字 |
|---|---|---|---|---|
| **Exner野(中前頭回後部)** | **純粋失書** | **保持** | **保持** | **障害** |
| Broca野(上前頭回後部) | Broca失語 | 比較的保持 | 非流暢 | 障害 |
| Wernicke野(上側頭回後部) | Wernicke失語 | 障害 | 流暢だが内容空疎 | 障害 |
| 角回(側頭頭頂接合部) | 失読失書 | 著しく障害 | 保持 | 障害 |
重要な否定知識:
- 純粋失書では「読む能力が保持される」ことが必須条件
- 角回損傷では「読字も障害される」ため純粋失書ではない
- Broca野損傷では「会話(発話)も非流暢になる」ため純粋失書ではない
- 運動皮質損傷による書字困難は「構音器官の麻痺」による二次障害であり、純粋失書ではない
頻出ポイント:
- Exner野:Brodmann6野の下部領域(一次運動皮質のすぐ上前方)
- 左利き人口の約10%は右側優位(ただし本問では左側病変が正答)
- 純粋失書は稀な症候で、臨床的には「失読失書」「Broca失語の重度書字障害」との区別が重要