第28回 言語聴覚士国家試験 第64問
高次脳機能障害第28回
左半球の病変で両手にみられるのはどれか。
- 1.拮抗失行
- 2.運動無視
- 3.観念性失行 ✓
- 4.肢節運動失行
- 5.道具の強迫的使用
正答:3番
解説
# 第28回 第64問 解説生成
## ■ 正答:3番 — 観念性失行
観念性失行(ideational apraxia)は、目的指向的な動作の系列を遂行する際に、動作の順序や手順、対象物の使用方法が分からなくなる障害です。左半球の広範な病変(特に前頭葉と頭頂葉の相互連絡に関わる領域)で生じ、**両側の手指に対称的にあらわれる** ことが特徴です。左脳は両手の運動プランニングを統合的に行うため、片側性ではなく両側性の症状となります。
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## 【各選択肢の解説】
### 1. 拮抗失行
❌ 誤り。これは両手が互いに拮抗する動き(一方が抵抗する側)をする状態で、**前頭葉内側面の両側性病変**(特に補足運動野)によって生じます。左半球単独の病変では典型的には出現しません。
### 2. 運動無視
❌ 誤り。運動無視は患側(麻痺側)のみに起こる症状であり、通常は**右半球病変による左側の運動活動の低下**です。両手にみられるものではなく、左側の肢に限定します。
### 3. 観念性失行
✅ **正しい。** 左半球病変で両手にみられる典型的な失行です。「歯ブラシで歯を磨く」「スプーンでご飯を食べる」など、道具の連続使用が崩れます。自然場面では可能でも、医師の指示や模倣では失敗するのが特徴。観念運動性失行(運動そのものは可能だが、複雑な目的指向的行動ができない)とは異なり、観念性失行では**行動の目的や系列の喪失**が前景化します。
### 4. 肢節運動失行
❌ 誤り。肢節運動失行(肢体不全麻痺に基づく精巧な手指運動の障害)は、**単側性**がほとんどで、通常は損傷された脳半球の対側肢に限定します。両手対称性の症状ではありません。
### 5. 道具の強迫的使用
❌ 誤り。これは**前頭葉眼窩前頭皮質(OFC)の損傷**で生じる症状で、見えた道具を無意識に手に取ってしまう現象です。観念性失行とは異なり、環境的依存性とも呼ばれます。左半球単独の病変に特異的ではなく、むしろ両側前頭葉の機能低下で顕著になります。
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## 【試験対策ポイント】
### 失行の左右半球別分類
**左半球(優位半球)病変で両手にみられる失行**:
| 失行タイプ | 責任病巣 | 症状の特徴 | 両手性か一側性か |
|---|---|---|---|
| 観念性失行 | 前頭葉・頭頂葉広範、弓状束 | 動作の系列・順序が分からない | **両手性(両側対称)** |
| 観念運動性失行 | 左角回・上側頭後部 | 模倣や命令での動作不全。自然場面では可能 | **両手性(失語に合併しやすい)** |
| 肢節運動失行 | 左下頭頂小葉 | 精巧な手指運動の障害 | **一側性(対側肢)** |
### 右半球病変で出現する失行・失認・無視
- **肢節運動失行**:右半球病変→**左手に一側性**
- **運動無視**:右半球病変→**左側肢の活動低下**
- **左半側空間無視**:右半球病変→左側空間への注