STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第17回 言語聴覚士国家試験 第72問

脳性麻痺第17回
脳性麻痺児への言語指導で適切なのはどれか。 a.定型発達の構音獲得順に練習音を選択する。 b.指さしやジェスチャーを取り入れる。 c.正しい構音ができるまで繰り返し練習する。 d.呼吸や姿勢のコントロールを促進する。 e.楽しく話す機会を多くする。 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — d.呼吸や姿勢のコントロールを促進する。e.楽しく話す機会を多くする。 脳性麻痺児への言語指導は、構音技能の獲得それ自体よりも、呼吸・姿勢などの基盤機能の改善と、動機づけとなるコミュニケーション機会の充実が優先される。脳性麻痺では運動制御障害が基本であり、その改善なしに構音練習の効果は限定的である。また、内発的動機づけを引き出すことがセラピューティック・プロセス全体を支えるため、eも重要である。 --- 【各選択肢の解説】 a. 定型発達の構音獲得順に練習音を選択する。 ❌ 誤り。脳性麻痺児では、定型発達と異なる構音発達過程をたどることが多く、個別の制御可能性や音韻体系に基づいて選択する必要がある。定型発達の順序は参考にはなるが、それに厳密に従うことは適切でない。 b. 指さしやジェスチャーを取り入れる。 ❌ 誤り。ジェスチャーなどの非言語的コミュニケーション手段の活用は有効な補助手段だが、これを「言語指導」の中心的方針として選択するのは不適切。言語指導の本質から外れる。また、脳性麻痺では上肢の運動障害も伴うことが多く、ジェスチャーの実行自体が困難な場合がある。 c. 正しい構音ができるまで繰り返し練習する。 ❌ 誤り。脳性麻痺児では反復練習の効果が限定的であり、筋緊張や運動制御の障害が構音の障壁であれば、単純な反復では改善しない。むしろ疲労や不安を招く。機能的な音韻体系の確立や、実際のコミュニケーション場面での使用が優先される。 d. 呼吸や姿勢のコントロールを促進する。 ✅ 正しい。脳性麻痺では痙直性、弛緩性、失調性など各型に共通する基盤として、運動制御障害がある。呼吸・姿勢の改善は構音、音声、流暢性のすべての向上に必須であり、医学的リハビリテーション的観点からも最優先事項である。 e. 楽しく話す機会を多くする。 ✅ 正しい。言語発達は社会的相互作用の中で促進される。脳性麻痺児は身体的制約から社会参加が限定されやすく、環境的剥奪に陥るリスクがある。楽しいコミュニケーション経験を増やすことは、内発的動機づけ、語彙拡大、社会的相互作用スキルの発達を促進する。また、セラピューティック・ラポール形成にも不可欠である。 --- 【試験対策ポイント】 脳性麻痺児の言語リハビリテーションの優先順位 | 優先度 | 対象 | 理由 | |---|---|---| | 最優先 | 呼吸・姿勢制御 | 構音・音声・流暢性の基盤機能 | | 高 | 筋緊張管理・関節可動域 | 運動制御障害の改善 | | 中 | コミュニケーション動機づけ | 社会参加と言語発達の促進 | | 参考 | 構音矯正技法 | 基盤改善後の音韻体系確立 | 脳性麻痺における言語指導の誤解 - 「正常化」志向の練習:❌ 適切でない。個別の機能レベルに応じた現実的目標設定が必須 - 単純反復練
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