第26回 言語聴覚士国家試験 第72問
脳性麻痺第26回
重度の脳性麻痺と知的能力障害のある前言語期の女児。
直接的指導として、最初に行うコミュニケーションの発達支援はどれか。
- 1.因果関係の理解
- 2.親子の関係性の発達
- 3.音声発信型エイドの導入
- 4.予期反応が得られる関わり
- 5.快適反応が得られる関わり ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 快適反応が得られる関わり
重度の脳性麻痺と知的能力障害があり、かつ前言語期の児童には、抽象的な学習や複雑な社会的理解を求める支援は適切ではありません。まず最初に必要なのは、児が快・不快を感じ、養育者の働きかけに身体や表情で反応する基盤を築くことです。快適反応は、その後のコミュニケーション発達(意図的コミュニケーション→象徴的コミュニケーション)の出発点となります。
---
【各選択肢の解説】
1. 因果関係の理解
❌ 誤り。因果関係の理解は、かなり高度な認知スキルであり、重度の知的能力障害がある前言語期の児童には到達困難な目標です。最初の段階の支援ではありません。
2. 親子の関係性の発達
❌ 誤り。重要な概念ですが、「直接的指導の最初に行う」という文脈では時期尚早です。親子関係は環境整備・支援の基盤として前提されるべきものであり、児の基本的な反応を引き出す前に親子関係を「発達させる」ことを目標にするのは順序が逆です。
3. 音声発信型エイドの導入
❌ 誤り。音声発信型AAC(代替・補助コミュニケーション)は、児が意図的なコミュニケーション欲求を持ち、因果理解が成立している段階で導入するものです。前言語期で快適反応すら安定していない段階では時期尚早です。
4. 予期反応が得られる関わり
❌ 誤り。予期反応(例:哺乳時に口を開ける、視線が向く)は、児が特定の刺激パターンを認識し、次の出来事を予測する段階を示します。快適反応よりも認知的に高度であり、その基盤となる快適反応が先に必要です。
5. 快適反応が得られる関わり
✅ 正しい。快適反応(笑顔、身体の脱力、視線接触など)は、児が養育者の働きかけを通じて「快感」を感じ、その後「このような働きかけは心地よい」という学習へつながります。これはコミュニケーション発達の最基盤であり、重度障害児への直接的指導の出発点です。
---
【試験対策ポイント】
コミュニケーション発達段階(前言語期から言語期へ)
| 段階 | 特徴 | 支援内容の例 |
|---|---|---|
| 反射的段階 | 無意識な反応のみ | 身体接触、温かい声かけ |
| 快適反応期 | 快・不快の感覚化 | 心地よい刺激の繰り返し(マザリーズ的働きかけ) |
| 予期反応期 | パターン認識・予測 | 習慣的な遊び、定型的な相互作用 |
| 意図的コミュニケーション期 | 目的的な働きかけ(まだ言語以前) | ジェスチャー、音声模倣の促進 |
| 象徴的コミュニケーション期 | 言語を含むシンボル使用 | AAC導入、語彙拡大 |
重度障害児への直接的指導の鉄則
- 最初は「快適反応」という身体的・感覚的基盤から始まる
- 知的能力障害が重いほど、抽象度の低い目標(感覚→予期→意図)の順序を守ることが重須
- 親子関係や環境調整は「前提条件」であり、「発達支援の目標」ではない
- 音声発信型AAC・因果関係は「後期段階」の支援