第17回 言語聴覚士国家試験 第94問
成人聴覚障害第17回
成人期に発症した聴覚障害者について誤っているのはどれか。
a.発声・発語の問題が大きい。
b.障害の受容が課題である。
c.聴覚補償や視覚的な代償手段の拡大を図る。
d.加齢による難聴は自覚が乏しい。
e.両側聴力レベルが60dBであれば人工内耳の適応である。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — a,e
成人期に発症した聴覚障害は、先天性聴覚障害と異なり、すでに言語獲得が完了しているため発声・発語の問題は軽微です。また、人工内耳の適応基準は両側聴力レベル70dB以上(補聴器で効果がない場合)であり、60dBでは適応外です。
---
【各選択肢の解説】
a. 発声・発語の問題が大きい。
❌ 誤り。成人期に発症した聴覚障害者は、音声言語習得前(乳幼児期)には聴覚を有していたため、既に音韻体系と発声パターンが確立しています。そのため先天性聾児のような構音障害や音声障害は生じません。むしろ自分の音声をフィードバック制御できなくなることによる軽微な音声変化にとどまります。
b. 障害の受容が課題である。
✅ 正しい。成人期発症の聴覚障害は、それまでの聴覚と聴力を失うという喪失体験を伴います。心理的ショックが大きく、障害の受容と適応が重要な課題となります。心理社会的支援が必要です。
c. 聴覚補償や視覚的な代償手段の拡大を図る。
✅ 正しい。補聴器の適切な装用、要約筆記・手話・指文字などの視覚的代償手段、ループシステムやワイヤレスマイクなどの環境整備により、聴覚補償と代償手段を多層的に活用することが有効です。
d. 加齢による難聴は自覚が乏しい。
✅ 正しい。加齢性難聴(老人性難聴)は高周波数帯から緩徐に進行するため、本人は自覚しないまま進行することが多いです。周囲が「テレビの音が大きい」などと指摘して初めて気づく場合が多い典型的な特徴です。
e. 両側聴力レベルが60dBであれば人工内耳の適応である。
❌ 誤り。人工内耳の適応基準は両側聴力レベルが70dB以上(高度難聴~ろう)で、補聴器装用下でも語音識別能が著しく低下している場合です。60dBは中等度難聴であり、補聴器で対応すべき段階です。人工内耳は聴力が非常に悪い場合の最終手段です。
---
【試験対策ポイント】
成人期聴覚障害と先天性聾児の対比
| 項目 | 先天性聾児 | 成人期発症聴覚障害 |
|---|---|---|
| 発声・発語 | 著しく障害あり | 軽微(音声言語習得済み) |
| 言語獲得 | 手話など代替言語が必須 | 音声言語の読話で対応可能 |
| 心理社会的課題 | 親の受容・教育支援 | 本人の障害受容・キャリア継続 |
| 教育的ニーズ | 言語教育が中心 | 補聴方法や代償手段の習得 |
人工内耳の適応基準
- 両側聴力レベル「70dB以上」(60dBは不適応)
- 補聴器装用下で語音識別能が著しく低下
- 本人が強い適応希望を有する
- 聴神経・蝸牛の解剖学的完全性
- 高度難聴~ろう患者対象
加齢性難聴の臨床的特徴
- 高周波数帯域から緩徐進行
- 初期は本人の自覚が乏しい
- 語音弁別能の低下が特徴的
- ビタミンB12不足で悪化することも