第18回 言語聴覚士国家試験 第139問
音響学第18回
母音が鼻音化した場合の説明として誤っているのはどれか。
- 1.軟口蓋が下がっている。
- 2.スペクトルにアンチホルマントが現れる。
- 3.スペクトルに新たなピークか現れる。
- 4.ホルマントの帯域幅に影響が出る。
- 5.口腔からの放射はない。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 口腔からの放射はない。
鼻音化した母音では、軟口蓋が下がることで鼻腔が共鳴系に加わり、スペクトル特性が大きく変化します。しかし「口腔からの放射がない」というのは誤りです。鼻音化母音では口腔と鼻腔が同時に開いているため、**口腔からも放射は続いており**、むしろ両者の干渉によってスペクトル変化が生じます。
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【各選択肢の解説】
1. 軟口蓋が下がっている。
✅ 正しい。母音の鼻音化は軟口蓋が下降することで鼻腔への気流漏出が生じるのが本質です。
2. スペクトルにアンチホルマントが現れる。
✅ 正しい。鼻腔共鳴により零点(アンチホルマント)が形成されます。これはホルマント周波数間に現れ、スペクトル上で谷状の減衰を示します。
3. スペクトルに新たなピークが現れる。
✅ 正しい。鼻腔の共鳴周波数(鼻ホルマント:300~400 Hz付近が典型的)が加わるため、新たなピークが出現します。
4. ホルマントの帯域幅に影響が出る。
✅ 正しい。口腔と鼻腔の並列共鳴系により放射インピーダンスが変化し、ホルマントの帯域幅(Q値)が減少して、ピークが広がります。
5. 口腔からの放射はない。
❌ 誤り。鼻音化母音では軟口蓋が下がっているものの、口腔が閉鎖されるわけではありません。口腔と鼻腔の両方から放射が同時に起こり、その干渉がスペクトル変化を引き起こします。
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【試験対策ポイント】
鼻音化母音のスペクトル変化(重要:すべて起こる)
| 現象 | 説明 | 周波数帯 |
|---|---|---|
| アンチホルマント出現 | 鼻腔との干渉により零点形成 | F1~F2間に多い |
| 新規ピーク出現 | 鼻ホルマント(鼻腔の共鳴) | 300~400 Hz付近 |
| 帯域幅増加 | Q値低下→ピーク幅広化 | 全ホルマント |
| F1低下傾向 | 全体的なフォルマント低下 | 低周波数領域 |
キーワード:
- 鼻音化=軟口蓋下降+口腔開放(同時並行)
- 口腔と鼻腔からの放射は「干渉」する
- 「放射がない」=誤り(鼻音は「放射制限」だが完全消失ではない)
- アンチホルマント=零点(スペクトルの谷)
- 鼻ホルマント=鼻腔固有の共鳴周波数