STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第18回 言語聴覚士国家試験 第161問

高次脳機能障害第18回
前大脳動脈領域の梗塞によって出現しない症状はどれか。
  1. 1.無言症
  2. 2.着衣失行 ✓
  3. 3.本能性把握反応
  4. 4.道具の強迫的使用
  5. 5.超皮質性運動失語

正答:2番

解説
■ 正答:2番 — 着衣失行 前大脳動脈(ACA)領域の梗塞は、主に補足運動野・帯状回・前頭葉内側面に障害をもたらします。着衣失行は頭頂葉(特に優位半球)の障害で生じるため、ACA領域梗塞では出現しません。ACA領域では、行動の自発性低下や強迫的行動が特徴的です。 --- 【各選択肢の解説】 1. 無言症 ✅ 出現します。補足運動野の障害により、発話の自発性が極度に低下し、音声産生がほぼ消失する症状です。応答性音声(他者の刺激に対する反応)は比較的保たれることが特徴です。 2. 着衣失行 ❌ 出現しません。着衣失行は頭頂葉(特に劣位半球)の障害で生じる失行であり、衣服と身体の空間的関係認識の障害です。ACA領域梗塞の標的部位ではないため選択肢として正答です。 3. 本能性把握反応 ✅ 出現します。前頭葉内側面(運動前皮質)の障害で生じる原始反射の解放現象です。手のひらに接触する物体を無意識に把握する反射的行動が見られます。 4. 道具の強迫的使用 ✅ 出現します。前頭葉内側面の損傷により、環境内の物体に対する過剰な反応性が増加し、その物体の機能に無意識に従う強迫行動が見られます(環境依存行動)。 5. 超皮質性運動失語 ✅ 出現します。補足運動野の障害により、発話自発性の低下と復唱能力の保持が特徴的な失語症型です。理解と復唱は良好ですが、自発的発話が極度に困難です。 --- 【試験対策ポイント】 前大脳動脈(ACA)領域梗塞の特徴 | 症状 | 機序 | 出現 | |---|---|---| | 無言症 | 補足運動野損傷 | ✅ | | 超皮質性運動失語 | 補足運動野損傷 | ✅ | | 本能性把握反応 | 運動前皮質損傷 | ✅ | | 道具の強迫的使用 | 環境依存行動 | ✅ | | 着衣失行 | 頭頂葉損傷 | ❌ | 失行症の発生部位別分類 | 失行の種類 | 責任部位 | 典型症状 | |---|---|---| | 着衣失行 | 頭頂葉(劣位) | 衣服と身体の関係認識障害 | | 観念失行 | 優位半球頭頂葉 | 動作順序の誤り | | 観念運動失行 | 優位半球前頭葉 | 個別動作の実行困難 | | 肢節失行 | 頭頂葉 | 手指の位置・方向認識障害 | 重要:失行症は一般的に優位半球領域の損傷で生じる。ACA領域で出現する症状は「発話の自発性低下」「強迫行動」「原始反射解放」が中心であり、失行(特に着衣失行)は出現しない。
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