STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第18回 言語聴覚士国家試験 第190問

聴力検査第18回
音にある程度反応する3歳児でABRが無反応の場合に考えられるのはどれか。 a.軽度難聴 b.低音障害型難聴 c.先天性真珠腫 d.auditory neuropathy e.高音急墜型難聴 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — d.auditory neuropathy、e.高音急墜型難聴 ABR(聴性脳幹反応)が無反応でありながら音への反応がある場合、聴力検査法と病態のミスマッチを考える必要があります。ABRは正常音声周波数(1~4kHz)に対する脳幹への同期的な神経活動を検出するため、同期性が失われる病態や、検査周波数帯域では高度障害があっても行動聴覚検査では反応できる周波数帯域が存在する場合に「音反応あり×ABR無反応」という矛盾が生じます。 --- 【各選択肢の解説】 a. 軽度難聴 ❌ 誤り。軽度難聴であれば、通常ABRは反応を示します。ABR無反応は一般に中等度以上の聴力低下を示唆しており、音への反応が見られても矛盾しません。 b. 低音障害型難聴 ❌ 誤り。低音障害型難聴では低周波数成分の閾値が上昇していますが、中~高周波数の聴力は保持されています。ABR検査に用いられるクリック音は広周波数帯域を含むため、中高周波聴力が保持されていれば通常ABR反応が得られます。 c. 先天性真珠腫 ❌ 誤り。先天性真珠腫は器質的な中耳~内耳病変であり、伝音難聴または感音難聴をもたらします。ABRが無反応で音反応がある特殊な病態ではなく、通常の難聴像を呈します。 d. auditory neuropathy ✅ 正しい。聴神経ニューロパチーは内耳の有毛細胞機能は比較的保持されているが、聴神経の同期性障害により、ABRは著しく障害または無反応となります。一方、行動聴覚検査(観察による反応検査)では、低周波音や言語音への反応が認められることがあります。これは蝸牛神経核以上の経路では情報が処理できるため、行動的には反応が観察できるためです。ABR無反応×行動反応ありの代表的病態。 e. 高音急墜型難聴 ✅ 正しい。高音急墜型難聴では4kHz以上の周波数で高度~極度の難聴がある一方、低周波数(500Hz~1kHz)では聴力が比較的保持されています。ABR検査に用いられるクリック音は高周波成分に強いため、高音が失聴していれば反応が減弱・消失する傾向があります。しかし行動聴覚検査では、低周波音(太鼓音など)に対して反応が認められるため、「音反応あり×ABR無反応」となります。 --- 【試験対策ポイント】 | 病態 | 内耳機能 | ABR | 行動聴覚検査 | 機序 | |---|---|---|---|---| | auditory neuropathy | 保持 | 無反応 | 反応あり | 聴神経の同期障害 | | 高音急墜型難聴 | 低音保持、高音障害 | 無反応* | 低音で反応 | クリック音は高周波中心 | | 軽度難聴 | 微小変化 | 反応 | 反応 | ABRは低レベルでも反応 | | 低音障害型 | 低音障害、中高音保持 | 通常反応 | 低音で反応弱 | 中高音情報でABR出現 | *高音急墜型でABRが無反応になるのは、マスキング不十分により低周波環境音が混入している場合、または検査周波数設定により高音周波数が強調される場合 キーワード: - ABR(Auditory Brainstem Response):脳幹への同期的神経活動
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