第28回 言語聴覚士国家試験 第13問
聴力検査第28回
マスキングを行わないで純音聴力検査を行ったところ、全周波数で反応の閾値は以下のとおりだった。
右耳:気導骨導とも 30 dB HL
左耳:気導 60 dB HL 骨導未施行
器質性障害を想定した場合、正しいのはどれか。
a.右耳は感音難聴である。
b.右骨導の聴力閾値はマスキングを行わないと確定できない。
c.左気導の聴力閾値は60dBHLより大きい。
d.左骨導の聴力閾値は正常の可能性がある。
e.左骨導の聴力閾値はマスキングを行わないと確定できない。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:2番
解説
# 第28回 第13問 解説
■ 正答:**2番(a,e)**
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## 正答の理由
この問題の鍵は、**マスキングなしの検査では「陰影聴取(shadow hearing)」が起こり、特に骨導は両耳間移行減衰量が小さい(15dB未満)ため、良聴耳からの漏聩音を聞いている可能性がある**という原理にあります。
右耳気導30dB・骨導30dBで気骨導差がないため、右耳は少なくとも器質性難聴でも感音難聴型です。そして左耳気導60dBで悪く、気導骨導差が存在する可能性が高いため、**左骨導がマスキングなしでは確定できない**ことが正しい理由です。
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## 各選択肢の解説
**a. 右耳は感音難聴である。**
✅ **正しい。** 右耳の気導聴力閾値30dB、骨導聴力閾値30dBで、気骨導差(ABG)がない状態です。器質性障害を想定したとき、気骨導差がなければ感音難聴と判断されます。
**b. 右骨導の聴力閾値はマスキングを行わないと確定できない。**
❌ 誤り。右耳の気導が30dBであり、気導で既に良聴耳の聴力を把握しています。右骨導を測定するときは右耳にマスキングを行いますが、**右耳がより悪い場合**はマスキング不要です。むしろ問題は左側です。
**c. 左気導の聴力閾値は60dBHLより大きい。**
❌ 誤り。器質性障害を想定しており、検査結果で左気導60dBHLと記録されている場合、これが実測値です。マスキング不要の気導検査(左耳がより悪い側)では、この値は信頼性があります。
**d. 左骨導の聴力閾値は正常の可能性がある。**
❌ 誤り。左骨導は測定されていない一方、左気導が60dBHLで悪い場合、器質性難聴であれば骨導はしばしば気導と同程度かそれより良いという法則に従います。**正常骨導(≤20dB)の可能性は低い**です。むしろ気導と同程度の60dB前後と予想されます。
**e. 左骨導の聴力閾値はマスキングを行わないと確定できない。**
✅ **正しい。** これが本問の最大の要点です。左耳の骨導を測定するときは、**右耳(気導30dB)がより良聴耳**であるため、右耳への陰影聴取が生じます。骨導の両耳間移行減衰量は15dB未満であり、左耳の振動子からの音が右耳に伝わりやすく、測定者は右耳の気導聴力(30dB)を測っている可能性があります。**正確な左骨導を知るにはマスキングが必須**です。
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## 試験対策ポイント
### ■ 両耳間移行減衰量(偏向度)の違い
| 測定耳 | 両耳間移行減衰量 | マスキングの重要性 |
|---|---|---|
| **気導** | 40~55dB | 差が大きいため、ABGが20dB以上あれば陰影聴取の可能性は比較的低い |
| **骨導** | **10~15dB(きわめて小さい)** | 差が極めて小さいため、**ほぼ常にマスキングが必要** |
→ **骨導測定時にマスキング不要な例外は「測定耳が有意に悪聴耳の場合のみ」**(両耳差が30dB以上など)
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