第18回 言語聴覚士国家試験 第51問
言語聴覚障害総論第18回
正しいのはどれか。
- 1.運動障害性構音障害へのAAC訓練は機能障害に対するアプローチと位置づけられる。
- 2.聴覚障害学生へのノートテイク支援体制の構築は活動制限に対するアプローチと位置づけられる。
- 3.言語発達障害への理解語彙獲得訓練は参加制約に対するアプローチと位置づけられる。
- 4.進行性疾患への訓練適応はない。
- 5.一般に集中訓練の必要性は維持期に比べて回復期の方が高い。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 一般に集中訓練の必要性は維持期に比べて回復期の方が高い
回復期は脳神経の可塑性が最も高く、神経学的回復が急速に起こる時期であるため、集中訓練によって機能獲得の効率が大きく高まります。一方、維持期は既獲得機能の維持が主目標であり、必ずしも集中訓練の必要性は高くありません。
---
【各選択肢の解説】
1. 運動障害性構音障害へのAAC訓練は機能障害に対するアプローチと位置づけられる。
❌ 誤り。ICF分類の誤解です。AAC(拡大代替コミュニケーション)訓練は、構音障害という機能障害があっても「コミュニケーション活動」を代替・補助する手段であり、活動制限に対するアプローチです。機能障害に対する直接的なアプローチは音声訓練・構音訓練です。
2. 聴覚障害学生へのノートテイク支援体制の構築は活動制限に対するアプローチと位置づけられる。
❌ 誤り。ノートテイク支援は「聴こえない」という機能障害を補うための社会的・環境的支援です。ICF分類では「参加制約」に対するアプローチです。環境因子の調整によって、学習という社会活動への参加を可能にします。
3. 言語発達障害への理解語彙獲得訓練は参加制約に対するアプローチと位置づけられる。
❌ 誤り。理解語彙獲得訓練は、語彙量という「機能障害」を直接的に改善するアプローチです。参加制約(社会活動の制限)に対する間接的支援ではなく、言語機能そのものへの直接訓練です。
4. 進行性疾患への訓練適応はない。
❌ 誤り。進行性疾患(パーキンソン病、ALS、MSA等)に対しても、機能低下を可能な限り遅延させ、QOLを維持する訓練の適応があります。治癒を目指さなくても、「維持期」としての訓練価値は大きいです。
5. 一般に集中訓練の必要性は維持期に比べて回復期の方が高い。
✅ 正しい。脳卒中等の脳損傷後、回復期(急性期から約3~6ヶ月)は神経可塑性が高く、神経学的回復が最大に起こる時期です。この時期の集中訓練は機能回復を促進する科学的根拠があります。維持期はすでに安定した機能を保つ段階であるため、集中度は相対的に低くても良好な成果が得られます。
---
【試験対策ポイント】
ICF分類(国際生活機能分類)の3層構造:
| レベル | 定義 | アプローチ例 |
|---|---|---|
| **機能障害** | 身体機能の障害(聴力低下・構音不可等) | 音声訓練、語彙訓練(直接訓練) |
| **活動制限** | 日常活動できない(コミュニケーション困難) | AAC導入、コミュニケーション訓練 |
| **参加制約** | 社会生活・役割が制限される | ノートテイク、就労支援、環境調整 |
訓練の3時期と特徴:
| 時期 | 神経可塑性 | 訓練の必要性 | 目標 |
|---|---|---|---|
| **急性期** | 低 | 低(医学的管理優先) | 生命維持、二次障害予防 |
| **回復期** | 最高 | 最も高い | 神経学的回復を最大化 |
| **維持期** | 低 | 低