STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第18回 言語聴覚士国家試験 第65問

言語発達障害学第18回
自閉症スペクトラム障害で機能低下のみられる脳部位はどれか。 a.聴覚性言語中枢(ウェルニッケ野) b.運動性言語中枢(ブローカ野) c.扁桃体 d.上側頭溝 e.海 馬 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:4番

解説
■ 正答:4番 — c,d 自閉症スペクトラム障害(ASD)における脳画像研究により、扁桃体と上側頭溝で機能低下が報告されています。扁桃体は社会的認知(顔認識、感情理解)に関わり、上側頭溝は生物学的運動知覚と心の理論に関連し、ASDの社会コミュニケーション障害の神経基盤を説明します。一方、言語中枢や海馬の機能低下はASDの中核症状に直接は関連しません。 --- 【各選択肢の解説】 a. 聴覚性言語中枢(ウェルニッケ野) ❌ 誤り。ASDの中核障害ではありません。ウェルニッケ野の機能は主に失語症患者で関心の対象となり、ASD患者では言語理解の一般的機能低下より、むしろ文脈や社会的意味理解の困難が問題となります。 b. 運動性言語中枢(ブローカ野) ❌ 誤り。ASDの標準的な脳画像所見として、ブローカ野の機能低下は報告されていません。ASDの言語症状は、言語中枢の障害というより、語用論的困難(文脈理解、談話理解)が特徴です。 c. 扁桃体 ✅ 正しい。ASDでは扁桃体の機能低下(または灰白質体積減少)が頻繁に報告されています。扁桃体は顔認識、感情処理、社会的情動学習に関わり、この機能低下がASDの対人関係困難や感情理解の障害に関連します。 d. 上側頭溝(STS: Superior Temporal Sulcus) ✅ 正しい。上側頭溝はASDで最も注目される領域の一つであり、生物学的運動知覚(目の動き、口の動きの認識)と心の理論(他者の意図・信念推論)に関わります。この領域の機能低下がASDの社会的認知障害を説明する重要な神経基盤です。 e. 海馬 ❌ 誤り。海馬は記憶(特に空間記憶・エピソード記憶)に関わり、ASDの中核的な神経基盤ではありません。ASDの患者が海馬障害を示すことは主要な所見ではなく、認知機能(IQ)が比較的保持されるASD患者も多いため、海馬機能の低下は中核症状説明にはならないとされています。 --- 【試験対策ポイント】 | 脳部位 | 主機能 | ASDとの関連性 | |---|---|---| | ウェルニッケ野 | 聴覚性言語理解 | 低 | | ブローカ野 | 表出言語・文法 | 低 | | **扁桃体** | 顔認識・感情処理 | **高**(機能低下報告) | | **上側頭溝** | 生物学的運動知覚・心の理論 | **高**(機能低下報告) | | 海馬 | 記憶形成 | 低 | **重要な否定知識** - ASDは「言語中枢」の障害ではなく、「社会脳」の機能異常と捉える - 扁桃体&上側頭溝の機能低下=社会コミュニケーション障害の神経基盤 - 海馬障害があるわけではない(記憶は比較的保持) **キーワード** - Theory of Mind(心の理論)→上側頭溝で処理 - Biological motion perception(生物学的運動知覚)→上側頭溝で処理 - 社会脳(Social Brain)→扁桃体+上側頭溝+その他ネットワーク
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