第18回 言語聴覚士国家試験 第7問
臨床神経学第18回
パーキンソン病について誤っているのはどれか。
- 1.ボタンがかけづらくなる。
- 2.歩き始めに足が出にくい。
- 3.突進現象がある。
- 4.嚥下障害が出現する。
- 5.歩行時にはアームスリングを使用する。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 歩行時にはアームスリングを使用する
パーキンソン病は運動低下性構音障害の典型疾患であり、筋剛直・振戦・寡動に特徴があります。嚥下障害も進行期に出現しますが、歩行時のアームスリング使用は根拠がありません。むしろ歩行時に腕を自由に動かすことは、バランス維持と歩行能力向上に有益です。アームスリングは肩脱臼や神経損傷の保護目的で使用される装具であり、パーキンソン病の歩行障害に対する標準的治療ではありません。
---
【各選択肢の解説】
1. ボタンがかけづらくなる。
✅ 正しい。パーキンソン病の寡動(運動が遅い・少ない)と筋剛直により、細かい動きが困難になります。特に両手協調動作が障害されるため、ボタン操作は典型的な日常生活障害です。
2. 歩き始めに足が出にくい。
✅ 正しい。「すくみ足」(freezing of gait)はパーキンソン病の特徴的症状です。歩き始めや障害物の前で足が凍ったように出にくくなり、転倒のリスクが高まります。
3. 突進現象がある。
✅ 正しい。突進現象(festination)は、前傾姿勢のため歩行速度が次第に速まり、制御できなくなる現象です。パーキンソン病特有の歩行異常で、転倒の原因になります。
4. 嚥下障害が出現する。
✅ 正しい。進行期のパーキンソン病では、咽頭筋の筋剛直や運動低下により嚥下困難が生じます。これは栄養摂取や誤嚥性肺炎のリスク要因です。
5. 歩行時にはアームスリングを使用する。
❌ 誤り。アームスリングはパーキンソン病の歩行治療の根拠がありません。むしろ歩行時に腕を自由に動かすことが大切であり、固定は重心移動と歩行能力を阻害します。アームスリングは肩脱臼や腕神経叢損傷の保護目的で使用される装具です。
---
【試験対策ポイント】
【パーキンソン病の主症状4つ】
- 安静時振戦(4〜6Hz、「ピローローリング」)
- 筋剛直(歯車様剛直・鉛管様剛直)
- 寡動(運動緩慢・動きが少ない)
- 姿勢反射障害(転倒しやすい)
【パーキンソン病の典型的な臨床所見】
| 所見 | 特徴 | ST関連 |
|---|---|---|
| すくみ足 | 歩き始めに足が出ない | 転倒リスク |
| 突進現象 | 歩行速度が加速 | バランス悪化 |
| 小股歩行 | 歩幅が狭い | 寡動の反映 |
| 小刻み発話 | 音声単調・速度不安定 | 運動低下性構音障害 |
【STが対応する主症状】
- 嚥下障害:咽頭期の動きの低下、食道期蠕動減弱
- 構音障害:単調性・加速現象・音声小(運動低下性タイプ)
- 高次脳機能:認知機能低下(進行期に痴呆出現)
【治療・訓練での注意】
- 歩行訓練:「歩幅を大きく」「一歩一歩を意識」の指示が有効
- アームスリング:パーキンソン病には不適応(根拠なし)