STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第18回 言語聴覚士国家試験 第80問

器質性構音障害第18回
舌癌術後の状態と対策の組合せで適切でないのはどれか。
  1. 1.残存舌の運動性低下 ― 舌の可動域拡大
  2. 2.舌根部半切 ― 咽頭破裂音による代償構音
  3. 3.舌尖切除 ― 下囗唇と上顎前歯による代償構音
  4. 4.残存舌のボリューム低下 ― 舌接触補助味(PAP)
  5. 5.舌全摘出 ― 軟口蓋挙上装置(PLP) ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — 舌全摘出 ― 軟口蓋挙上装置(PLP) 舌全摘出では、舌が完全に欠落しているため、いかなる代償機構でも音声言語機能の回復は極めて困難です。PLP(軟口蓋挙上装置)は残存舌が存在し、その運動性を利用できる場合に、咽頭での構音を補助する装置ですが、舌全摘出ではその基盤となる舌機能そのものが存在しないため、この装置の使用は適切ではありません。 --- 【各選択肢の解説】 1. 残存舌の運動性低下 ― 舌の可動域拡大 ✅ 正しい。舌の可動域拡大訓練により、残存舌の運動性を高め、代償構音や嚥下機能の向上を促すアプローチは標準的な対策です。筋力と可動域の両面から機能回復を目指します。 2. 舌根部半切 ― 咽頭破裂音による代償構音 ✅ 正しい。舌根部が切除されると、本来の破裂音(特に/k/、/g/)の構音が困難になります。咽頭破裂音(咽頭で構成した破裂音)による代償構音は、この場合の標準的な適応です。 3. 舌尖切除 ― 下口唇と上顎前歯による代償構音 ✅ 正しい。舌尖は/t/、/d/、/n/などの歯茎音構成に必須です。舌尖が欠落した場合、下口唇と上顎前歯を接触させることで、これらの音を代償的に構成することができます。 4. 残存舌のボリューム低下 ― 舌接触補助味(PAP) ✅ 正しい。舌のボリューム低下により、口腔内での舌接触面積や接触圧が減少します。PAP(舌接触補助装置)は口蓋に凹凸を設けることで、残存舌の接触を増加させ、代償構音を支援します。 5. 舌全摘出 ― 軟口蓋挙上装置(PLP) ❌ 誤り。舌全摘出では舌が存在しないため、PLP装置を用いても咽頭での構音代償は不可能です。PLP は「残存舌が存在し、その運動性を活用できる」ことを前提としており、舌全摘出では音声機能の根本的な回復手段がありません。 --- 【試験対策ポイント】 舌癌術後の代償構音・装置の適応原則 | 欠損部位 | 構音障害の特徴 | 適応装置・訓練 | ポイント | |---|---|---|---| | 舌尖 | /t/,/d/,/n/ 障害 | 下口唇+上顎前歯による代償構音 | 歯茎音の再構成 | | 舌根部 | /k/,/g/ 障害 | 咽頭破裂音 | 咽頭で音源を変更 | | 全体的萎縮 | 全音素に軽度障害 | 舌可動域拡大訓練 | 残存舌の機能化 | | ボリューム低下 | 接触不良 | PAP装置(口蓋凹凸) | 接触面積・圧力を補助 | | 舌全摘出 | 全構音不可能 | 有効な手段なし | **重要:装置では代償不可** | キーワード:「舌全摘出=根本的音声機能回復は困難」「装置は残存舌機能があることが前提」「PLP は咽頭構音を補助するもの。舌がなくては機能しない」
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