第18回 言語聴覚士国家試験 第86問
嚥下障害第18回
口腔期・咽頭期にみられる嚥下障害の所見と対処法との組合せで適切でないのはどれか。
- 1.舌根運動障害 ― 舌可動域拡大
- 2.食道人口部開大不全 ― バルーン法
- 3.声門閉鎖不全 ― 交互嚥下 ✓
- 4.嚥下反射惹起不全 ― 咽頭冷圧刺激
- 5.一側咽頭・喉頭麻痺 ― 頸部回旋位
正答:3番
解説
# 第18回 第86問 解説
■ 正答:3番 — 声門閉鎖不全 ― 交互嚥下
声門閉鎖不全は気道防御が不十分となり、嚥下中の誤嚥(特に咽頭期の喉頭侵入・誤嚥)を起こしやすい状態です。これに対する直接的な対処法は、声門閉鎖を強化する**息こらえ嚥下(声門閉鎖嚥下)**や前頸部からの喉頭挙上を促す手技、プッシング・プリング運動などです。交互嚥下は声門閉鎖そのものを改善する手技ではないため、組合せとして適切ではありません。
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【各選択肢の解説】
1. 舌根運動障害 ― 舌可動域拡大
✅ 正しい。**口腔期**の食塊送り込みには舌根の運動が重要であり、舌の可動域を広げる訓練(舌の挙上・後退・左右運動)で送り込み機能の改善を図ります。組合せは適切です。
2. 食道入口部開大不全 ― バルーン法
✅ 正しい。**咽頭期**の食道入口部(輪状咽頭筋部)の開大不全に対しては、バルーンカテーテルで段階的に拡張するバルーン拡張法が有効です。組合せは適切です。
3. 声門閉鎖不全 ― 交互嚥下
❌ 誤り。交互嚥下は性状の異なる食品(固形物と液体など)を交互に嚥下し、咽頭や食道に残留した食塊をクリアする方法です。**咽頭残留**への対処として有効ですが、声門閉鎖不全の改善には直接結びつきません。声門閉鎖不全には息こらえ嚥下や喉頭挙上を促す手技が適切です。
4. 嚥下反射惹起不全 ― 咽頭冷圧刺激
✅ 正しい。**咽頭期**の嚥下反射が遅延・減弱している場合、前口蓋弓付近を冷却した器具で機械的・温度的に刺激する咽頭冷圧刺激(アイスマッサージ)で反射惹起を促します。組合せは適切です。
5. 一側咽頭・喉頭麻痺 ― 頸部回旋位
✅ 正しい。一側の咽頭・喉頭麻痺では、**麻痺側へ頸部を回旋**することで麻痺側の咽頭腔を閉鎖し、食塊を健側へ誘導して通過させ、誤嚥を減らします。組合せは適切です。
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【試験対策ポイント】
嚥下障害の所見と対処法は「**どの相の障害か**」と「**手技が何を狙っているか**」を対応させて整理します。
| 障害(相) | 対処法 | 狙い |
|---|---|---|
| 舌根運動障害(口腔期) | 舌可動域拡大訓練 | 送り込み改善 |
| 食道入口部開大不全(咽頭期) | バルーン法 | 入口部拡張 |
| **声門閉鎖不全(咽頭期)** | **息こらえ嚥下・喉頭挙上手技** | 気道防御強化 |
| 嚥下反射惹起不全(咽頭期) | 咽頭冷圧刺激 | 反射惹起 |
| 一側咽頭・喉頭麻痺(咽頭期) | 頸部回旋(麻痺側へ) | 健側への食塊誘導 |
ポイントの区別:
- **交互嚥下** … 咽頭・食道の**残留除去**が目的。声門閉鎖の改善ではない。
- **複数回嚥下** … 1口を複数回飲み込んで残留を減らす。
- **頸部回旋** … 麻痺側へ回旋(麻痺側咽頭を閉じる)。一側麻痺で用いる。
- **頸部前屈(あご引き)** … 嚥下反射惹起不全・喉頭挙上不全で気道防御を補助。
声門閉鎖不全への対処として「交互嚥下」を選ばせる本問のような**誤った組合せ**は頻出です。各手技が「残留対策」か「誤嚥対策(気道防御)」かを分けて覚えましょう。