第19回 言語聴覚士国家試験 第141問
音響学第19回
正しいのはどれか。
- 1.騒音レベルが85dBを超えなければ騒音と感じない。
- 2.音脈とは一つの音を構成する正弦波成分のことである。
- 3.複数の音源から音が同時に到来すれば一つの音に聞こえる。
- 4.人が不安にならないためには音を遮断するのが効果的である。
- 5.環境音の聞き取りはいち早く危険を察知するための情報取得の働きをもつ。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 環境音の聞き取りはいち早く危険を察知するための情報取得の働きをもつ。
環境音(周囲の背景音)の認識は、外部環境の変化を監視し、潜在的な危険を素早く検出するための適応的な聴覚機能です。私たちは無意識のうちに環境音を処理して脅威を認識しており、これは生存に直結する重要な働きをもちます。他の選択肢は音響学の基本概念の誤解や、聴覚心理学における不正確な知識です。
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【各選択肢の解説】
1. 騒音レベルが85dBを超えなければ騒音と感じない。
❌ 誤り。騒音は客観的な音圧レベルだけでは定義されません。同じ85dB未満の音でも、予期しない音、望まない音、不快感を伴う音は「騒音」と感じます。騒音は「不快感を伴う音」という主観的定義があり、85dBはあくまで職業性難聴のリスク閾値に過ぎません。
2. 音脈とは一つの音を構成する正弦波成分のことである。
❌ 誤り。音脈(オーディトリーストリーム)は、複数の音が時間的・周波数的に近い場合に、それらが一つの音源から発せられたものとしてグループ化される現象です。フーリエ成分(正弦波成分)ではなく、聴覚的統合(聴覚場面分析)の概念です。
3. 複数の音源から音が同時に到来すれば一つの音に聞こえる。
❌ 誤り。複数の音源からの音が同時に到来しても、必ずしも一つの音に統合されるとは限りません。周波数の差、時間差、開始時刻のずれなどにより、異なる音源として分離聴取される場合もあります。これは聴覚的シーン分析(ASA)に関わる複雑なプロセスです。
4. 人が不安にならないためには音を遮断するのが効果的である。
❌ 誤り。むしろ逆です。不安の軽減には、周囲の状況を認識できることが重要です。完全に音を遮断すると、予測不可能な環境への不安(特に聴覚遮断による不安や無力感)が増加する可能性があります。情報取得が不安低減に有効です。
5. 環境音の聞き取りはいち早く危険を察知するための情報取得の働きをもつ。
✅ 正しい。環境音は脳幹レベルで常時監視され、突然の音や異常な音は即座に危険信号として処理されます。これは進化的に適応した聴覚機能であり、職場の警告音、交通音、他者の声など、環境内の有意味な情報を抽出する基本的な役割です。
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【試験対策ポイント】
騒音 vs 環境音の違い
| 項目 | 騒音 | 環境音 |
|---|---|---|
| 定義 | 不快・迷惑な音(主観的) | 周囲の背景音(客観的) |
| 音圧 | 高い場合が多い | 様々 |
| 機能 | 有害 | 情報取得・危険察知 |
| 例 | 建設音、高周波騒音 | 足音、扉音、車音 |
キーワード
- 聴覚的シーン分析(ASA):複数の音源を分離聴取する脳のプロセス
- 音脈統合:周波数・時間的連続性により音がグループ化される
- 聴覚的警報機能:脳幹の優位性により環境の変化に即応
- 感覚遮断の心理的影響:情報欠損