第19回 言語聴覚士国家試験 第32問
臨床心理学第19回
クライアント中心療法の説明として適切でないのはどれか。
a.治療者はクライアントに共感的理解を示す。
b.治療者とクライアントとの人間関係の質が重視される。
c.自己認知が歪んでいる状態を心理的不適応状態と捉える。
d.治療者はクライアントが治療者に向ける個人的感情を分析する。
e.転移感情はクライアントの幼少期の親子関係を明らかにする手がかりとする。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — d,e
クライアント中心療法(人間中心療法)はカール・ロジャーズが創始した非指示的心理療法です。この療法では治療者とクライアントの関係性そのものが治癒的であると考え、転移や分析を重視しません。選択肢dとeは精神分析療法の特徴であり、クライアント中心療法の基本理念に反します。
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【各選択肢の解説】
a. 治療者はクライアントに共感的理解を示す。
✅ 正しい。ロジャーズが提唱した「必要充分条件」の一つが「共感的理解」です。治療者がクライアントの内的世界を理解し、その感情や経験に寄り添う姿勢が治療の基盤となります。
b. 治療者とクライアントとの人間関係の質が重視される。
✅ 正しい。クライアント中心療法では、治療者とクライアントの「本物の人間関係」が治癒的因子です。無条件の肯定的配慮と一致性(congruence)も含めて関係性が重視されます。
c. 自己認知が歪んでいる状態を心理的不適応状態と捉える。
✅ 正しい。ロジャーズは「理想自己と現在の自己のギャップ」が心理的不適応をもたらすと考えており、自己概念の歪みが問題の根本と位置づけます。
d. 治療者はクライアントが治療者に向ける個人的感情を分析する。
❌ 誤り。クライアント中心療法では転移を分析しません。転移の解釈や分析は精神分析療法の特徴です。クライアント中心療法では、クライアント自身が自分の感情に気づくプロセスを重視し、治療者は解釈ではなく共感と傾聴で対応します。
e. 転移感情はクライアントの幼少期の親子関係を明らかにする手がかりとする。
❌ 誤り。転移を幼少期の関係性を明かす手がかりとみなすのは精神分析療法です。クライアント中心療法ではクライアント自身の現在の経験と成長過程を重視し、過去の無意識的な葛藤の「解釈」を行いません。
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【試験対策ポイント】
クライアント中心療法 vs 精神分析療法の比較表
| 項目 | クライアント中心療法 | 精神分析療法 |
|---|---|---|
| 療法者の姿勢 | 指示的でない・共感的 | 中立的・解釈的 |
| 関係性の意味 | 関係性そのものが治癒的 | 転移の分析が治癒的 |
| 過去への焦点 | 現在を重視 | 潜在意識・幼少期を重視 |
| 転移への対応 | 転移を分析しない | 転移を積極的に分析 |
| 必要充分条件 | 共感・無条件の肯定的配慮・一致性 | 該当なし |
ロジャーズの「必要充分条件」
- 共感的理解(empathic understanding)
- 無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)
- 一致性/真正性(congruence)
頻出の誤り:転移は「精神分析特有の概念・技法」という認識を持つことが重要。クライアント中心療法ではこれを活用しません。