STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第19回 言語聴覚士国家試験 第63問

高次脳機能障害第19回
ハサミを用いて紙を半分に切る動作に影響しないのはどれか。
  1. 1.左右障害 ✓
  2. 2.半側空間無視
  3. 3.観念性失行
  4. 4.視覚性失認
  5. 5.肢節運動失行

正答:1番

解説
■ 正答:1番 — 左右障害 左右障害は左右方向の概念的理解の障害(「あなたの右手は?」という指示理解の困難)であり、ハサミで紙を切るという具体的な動作実行には直接影響しません。一方、他の4つの障害はすべて動作の実行を阻害します。 --- 【各選択肢の解説】 1. 左右障害 ✅ 正しい。左右障害は身体図式の一部で、身体の部位の左右方向の認識障害です。「右手を上げてください」という命令理解に支障をきたしますが、実際にハサミを握ってニッパー動作を行う能力には直接影響しません。既に両手を構え、ハサミと紙の相対位置が目の前にあれば、動作実行は可能です。 2. 半側空間無視 ❌ 誤り。半側空間無視は、脳損傷と反対側の視空間を意識から抜け落とす障害です。左半側空間無視であれば、紙の左側が視野から消失し、紙全体を半分に切ることができません。ハサミの軌跡制御や目標到達に支障が生じます。 3. 観念性失行 ❌ 誤り。観念性失行は、複数の物体を用いた一連の動作計画の障害です。「ハサミで紙を切る」という行為の意図は理解できても、ハサミの向きや紙の位置関係など、道具使用の段階的計画が崩れて、不適切な動作順序や方法になります。 4. 視覚性失認 ❌ 誤り。視覚性失認は対象物の視覚的認識障害です。ハサミを「ハサミ」として認識できず、また紙も何であるかが視覚的に理解できません。物体の形状・大きさ・質感の視覚的把握ができないため、適切な把持方法や力加減が不可能になります。 5. 肢節運動失行 ❌ 誤り。肢節運動失行は手指・手関節など末梢の個別関節の制御障害です。ハサミを握る際の手指の細かい制御や、切断時の開閉動作が不正確になり、紙を正確に半分に切ることが困難になります。 --- 【試験対策ポイント】 **ハサミで紙を切る動作に関わる脳機能** | 障害名 | 障害の本質 | 動作への影響 | |---|---|---| | 左右障害 | 身体図式(左右の概念理解) | なし(動作実行は可能) | | 半側空間無視 | 視空間認識の片側消失 | あり(紙全体が見えない) | | 観念性失行 | 複数物体の道具使用計画 | あり(動作順序が崩れる) | | 視覚性失認 | 視覚的対象認識 | あり(物体が理解できない) | | 肢節運動失行 | 末梢関節制御 | あり(手指操作が不正確) | **頻出の落とし穴** - 左右障害は「方向概念」の障害であり、実動作(ADL)には最も影響が少ない - 「何ができないか」で失行の分類を区別:観念性失行=「何をするか」、肢節運動失行=「どうするか」 - 視覚性失認は「見えているが何かわからない」=物体認識の障害に限定される
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