第20回 言語聴覚士国家試験 第10問
精神医学第20回
アルコール関連障害について誤っているのはどれか。
- 1.日本では欧米に比べてアルコール依存症が少ない。
- 2.アルコール依存によってアルコールへの耐性が低下する。 ✓
- 3.依存症者は離脱症状を軽減するためにアルコール摂取を続けようとする。
- 4.依存症の治療では完全な断酒が原則である。
- 5.長期の大量飲酒によって慢性の精神障害が生じる。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — アルコール依存によってアルコールへの耐性が低下する。
アルコール依存症では、繰り返しの使用により神経系が順応(耐性化)するため、同じ陶酔効果を得るにはより多量のアルコール摂取が必要になります。したがって「耐性が低下する」という記述は誤りです。実際には耐性が増加(高まる)します。
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【各選択肢の解説】
1. 日本では欧米に比べてアルコール依存症が少ない。
✅ 正しい。アルコール依存症の有病率は欧米(特に北欧・東欧)が日本より高いことが報告されています。ただし日本でも患者数は少なくなく、男性で約3~4%が生涯診断基準を満たすとされています。
2. アルコール依存によってアルコールへの耐性が低下する。
❌ 誤り。正しくは「耐性が増加(高まる)」です。依存症発症の過程で、連続飲酒により中枢神経系の適応が生じ、同じ酩酊感を得るためにより多量が必要になります。これを耐性形成と呼びます。
3. 依存症者は離脱症状を軽減するためにアルコール摂取を続けようとする。
✅ 正しい。アルコール依存症の本質的な特徴です。断酒により離脱症状(振戦・悪心・発汗・不眠など)が出現するため、その苦痛を避けるため飲酒を継続してしまう悪循環が生じます。これを「負の強化」と呼びます。
4. 依存症の治療では完全な断酒が原則である。
✅ 正しい。薬物依存症の治療は「完全な断薬」が目標です。「減酒」や「適量飲酒」の目標は非依存者向けであり、一度依存症が成立した者に対しては完全断酒が標準的治療方針です。
5. 長期の大量飲酒によって慢性の精神障害が生じる。
✅ 正しい。アルコール中毒性精神病・アルコール性認知症・ウェルニッケ・コルサコフ症候群など、脳障害により多くの精神疾患が生じます。特にビタミンB1欠乏が重要な背景因子です。
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【試験対策ポイント】
耐性・依存・離脱の定義の区別
| 概念 | 定義 | アルコール依存症での状態 |
|---|---|---|
| 耐性 | 同じ効果に必要な用量が増加 | **増加(初期~中期で著しい)** |
| 依存 | 物質がなければ心身に支障が生じる状態 | あり(身体的・心理的) |
| 離脱症状 | 物質の使用中止時に出現する症状 | あり(振戦・痙攣・幻覚・不眠) |
アルコール関連障害の臨床的特徴
・早期段階:耐性の増加が著しい(2倍~数倍)
・中期段階:離脱症状が顕著化(飲酒の主な動機)
・晩期段階:耐性が低下する傾向も出現(肝硬変など臓器障害のため)→「低下」は病的変化による
紛らわしいポイント
選択肢2「耐性が低下」は、晩期の肝硬変ステージでは実際に低下が見られるため、受験生が「たまに低下することもある」と判断してしまう可能性があります。ただし依存症形成の**本質的なメカニズム**は耐性の増加であり、「依存によって耐性が低下する」という因果関係は誤りです。
キーワード:完全断酒・負の