第20回 言語聴覚士国家試験 第155問
失語症第20回
前頭葉損傷による言語症状として誤っているのはどれか。
- 1.純粋失書
- 2.喚語障害
- 3.純粋失読 ✓
- 4.発語失行
- 5.聴覚的理解障害
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 純粋失読
前頭葉損傷は言語表出系に影響するため、「読む」という視覚-言語処理を担当する側頭葉(角回など)の損傷を必要とする純粋失読は、前頭葉損傷では典型的には生じません。純粋失読は頭頂葉-側頭葉接合部の損傷で起こり、前頭葉損傷の言語症状ではありません。
---
【各選択肢の解説】
1. 純粋失書
✅ 正しい。前頭葉下部(特に一次運動皮質下方)の損傷により、書字に必要な運動制御が障害され、純粋失書が生じることがあります。理解や読みは比較的保たれます。
2. 喚語障害
✅ 正しい。前頭葉損傷による典型的な言語症状です。語彙へのアクセス困難により語が出しにくくなり、意味的・音韻的パラフェーシアが生じます。
3. 純粋失読
❌ 誤り。純粋失読は視覚-言語処理に関わる頭頂葉後部(特に角回)や頭頂-側頭-後頭葉接合部の損傷で生じます。前頭葉損傷では読む能力そのものが選択的に障害されることはありません。読み困難が生じるなら、他の言語症状(失語症全般)に伴うものです。
4. 発語失行
✅ 正しい。前頭葉のBroca野周辺(特に44、45野)の損傷により、音の並び順序の計画・実行が障害され、発語失行が生じます。代表的な前頭葉言語症状です。
5. 聴覚的理解障害
✅ 正しい。前頭葉下部の損傷(特にBroca失語)により、文法的に複雑な文の理解が障害される傾向があります。特に受動文や右分枝型文では理解困難が顕著です。
---
【試験対策ポイント】
前頭葉損傷 vs 側頭-頭頂葉損傷による言語症状の対比
| 症状 | 部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 純粋失書 | 前頭葉(一次運動皮質下) | ✅ 前頭葉で起こる |
| 喚語障害 | 前頭葉下部 | ✅ 前頭葉で起こる |
| 発語失行 | 前頭葉(Broca野周辺) | ✅ 前頭葉で起こる |
| 聴覚的理解障害 | 前頭葉下部 | ✅ 前頭葉で起こる |
| **純粋失読** | **頭頂-側頭-後頭葉接合部** | **❌ 前頭葉では起こらない** |
重要な否定知識
- 純粋失読は「視覚系-言語系の接続」の障害→後頭葉-頭頂葉の役割
- 前頭葉は「言語表出」に特化→読みの入力系は損傷されない
- Broca失語患者が読み困難を示すなら、それは理解障害に伴う二次的なもの
頻出の引っ掛けポイント
- 「前頭葉損傷=すべての言語機能が障害される」と勘違い
- 純粋失読は実は低頻度な症状だが、試験では「部位特異的症状」として狙われやすい