STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第20回 言語聴覚士国家試験 第55問

失語症第20回
全失語に合併する頻度が最も高いのはどれか。
  1. 1.物体失認
  2. 2.相貌失認
  3. 3.着衣失行
  4. 4.観念性失行 ✓
  5. 5.地誌的失見当

正答:4番

解説
■ 正答:4番 — 観念性失行 全失語は言語機能の重篤な障害であり、左半球(優位半球)の広範な損傷を伴う。観念性失行は左頭頂葉後部~角回の損傷で生じ、全失語の責任病巣(左中大脳動脈領域の広範梗塞)に高頻度で重複するため、最も合併しやすい失行である。 --- 【各選択肢の解説】 1. 物体失認 ❌ 誤り。物体失認は右頭頂側頭葉の損傷(特に右後頭側頭葉)で生じる視覚失認であり、言語優位半球(左半球)の病変である全失語とは独立した病巣が必要である。全失語患者で物体失認が合併することは稀である。 2. 相貌失認 ❌ 誤り。相貌失認(顔面失認)は両側側頭葉下部(特に紡錘状回)の損傷で生じ、全失語の責任病巣(左中大脳動脈領域)との重複が少ない。両側性病変が必要なため、一側の全失語患者には合併しにくい。 3. 着衣失行 ❌ 誤り。着衣失行は左前頭葉(特に補足運動野や中心前回周辺)の損傷で生じる運動性失行の一種である。全失語の責任病巣とは完全には一致しないため、合併頻度は観念性失行より低い。 4. 観念性失行 ✅ 正しい。観念性失行は左頭頂葉後部(角回)~頭頂側頭接合部の損傷で生じ、全失語の最も代表的な責任病巣(左中大脳動脈領域の広範損傷)に高度に重複する。したがって最も合併頻度が高い。 5. 地誌的失見当 ❌ 誤り。地誌的失見当は右海馬・右頭頂葉の損傷で生じる空間認知障害であり、左半球優位の全失語の責任病巣とは異なる領域の損傷が必要である。合併頻度は低い。 --- 【試験対策ポイント】 **失語症と高次脳機能障害の病巣の重複関係** | 高次脳機能障害 | 責任病巣 | 全失語との合併 | |---|---|---| | 観念性失行 | 左角回~頭頂側頭接合部 | ◎ 高い | | 運動失語 | 左下前頭回(Broca野) | ◎ 高い | | 感覚失語 | 左上側頭回(Wernicke野) | ◎ 高い | | 着衣失行 | 左前頭葉(補足運動野) | △ 中程度 | | 物体失認 | 右後頭側頭葉 | ✕ 低い | | 相貌失認 | 両側側頭葉下部 | ✕ 低い | | 地誌的失見当 | 右海馬・右頭頂葉 | ✕ 低い | **全失語の特徴** - 責任病巣:左中大脳動脈(MCA)の広範領域(Broca野+Wernicke野+その周辺) - 流暢性・理解・復唱いずれも著しく不良 - 同じ左半球優位領域の観念性失行と高頻度で共存する **頻出陥阱** - 「全失語=全ての高次脳機能が障害される」と誤解しやすい→実際は言語に限定 - 観念性失行と着衣失行は別物(着衣失行は運動面の障害、観念性失行は行為の概念障害)
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