第20回 言語聴覚士国家試験 第62問
高次脳機能障害第20回
脳内の線維連絡(ネットワーク)について誤っているのはどれか。
- 1.前頭前野ネットワークは遂行機能に関係する。
- 2.言語ネットワークには線条体が含まれる。
- 3.背側頭頂前頭ネットワークは空間性注意に関係する。
- 4.腹側後頭側頭ネットワークの損傷で物体失認が出現する。
- 5.交連線維の損傷によって半球内離断症状が出現する。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 交連線維の損傷によって半球内離断症状が出現する
交連線維(脳梁など)の損傷は「半球間離断症状」(分離脳症候群)を生じます。一方「半球内離断症状」は同一半球内の領域間の連絡が遮断されたときに出現するもので、交連線維の損傷では生じません。この用語の使い分けが重要な誤りポイントです。
---
【各選択肢の解説】
1. 前頭前野ネットワークは遂行機能に関係する
✅ 正しい。背外側前頭前野を中心とした前頭前野ネットワークは、計画性・判断・抑制・ワーキングメモリなど遂行機能全般に関係します。ST国試で頻出の重要概念です。
2. 言語ネットワークには線条体が含まれる
✅ 正しい。言語ネットワークは古典的なブローカ野・ウェルニッケ野だけでなく、線条体(特に左側)も重要な構成要素として含まれます。これは近年の神経画像研究で確立されている知見です。
3. 背側頭頂前頭ネットワークは空間性注意に関係する
✅ 正しい。背側ネットワーク(頭頂皮質と前頭眼野を含む)は、視空間注意・目標指向的注意に関係します。対照的に腹側ネットワークは他者の意図や異常刺激への反応に関わります。
4. 腹側後頭側頭ネットワークの損傷で物体失認が出現する
✅ 正しい。腹側視覚経路(「what」経路)に含まれる腹側後頭側頭ネットワークの損傷により、物体の形態認識能力の障害(物体失認)が出現します。
5. 交連線維の損傷によって半球内離断症状が出現する
❌ 誤り。交連線維(脳梁など)の損傷では「半球間」離断症状(分離脳症候群)が出現します。「半球内」離断症状は同一半球内の領域間の連絡遮断により出現するため、用語が逆です。
---
【試験対策ポイント】
大脳皮質ネットワークの分類と機能
| ネットワーク | 構成要素 | 主機能 | 損傷時の症状例 |
|---|---|---|---|
| 前頭前野 | 背外側・眼窩前頭野 | 遂行機能・推論 | 計画性低下・判断障害 |
| 言語 | ブローカ野・ウェルニッケ野・線条体・白質 | 言語産出・理解 | 失語症 |
| 背側頭頂前頭 | 頭頂皮質・前頭眼野 | 空間性注意・目標行動 | 半側空間無視 |
| 腹側視覚(後頭側頭) | 腹側後頭側頭皮質 | 物体認識 | 物体失認 |
離断症状の用語区別(超重要)
- 半球間離断症状:左右半球間の連絡遮断(脳梁損傷など)→例:左手が右脳の命令に反応しない
- 半球内離断症状:同一半球内領域間の連絡遮断(白質束の損傷など)→例:異なる感覚統合の障害
キーワード:「線維連絡」は同一半球内の領域を繋ぐ可能性が高いため、半球内離断を疑う