STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第20回 言語聴覚士国家試験 第67問

言語発達障害学第20回
全盲の小学校1年男児。対人関係は良好であり、「バイバイ」、「ごはんだよ」など、状況の中で理解可能な語彙が数語ある。適切でない指導はどれか。
  1. 1.操作すると音が出る玩具で遊ぶ。
  2. 2.バスタオルを触らせて「お風呂だよ」とはなしかける。
  3. 3.玩具のしまってある位置を一定にする。
  4. 4.本児の靴箱にフェルトのマークをつける。
  5. 5.点字の学習を行う。 ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — 点字の学習を行う。 全盲の小学1年児は、現在「バイバイ」「ごはんだよ」など状況依存的な語彙がわずか数語という極めて限定的な言語発達段階にあります。この段階では、音声言語そのものの基盤を形成することが優先課題であり、抽象的体系である点字学習は発達段階に不適切です。点字学習は一般的に語彙がより豊富で、音声言語がより体系化した時期(おおむね小学3~4年以降)が適切とされています。 --- 【各選択肢の解説】 1. 操作すると音が出る玩具で遊ぶ。 ✅ 正しい。視覚障害児にとって、音響フィードバックは行動と結果の因果関係を学ぶ重要な学習機会です。操作→音という連鎖経験は、認知発達と動機づけを促進します。 2. バスタオルを触らせて「お風呂だよ」と話しかける。 ✅ 正しい。触覚と音声言語を結びつけ、状況依存的な語彙から意味理解へ移行させる段階的指導として適切です。多感覚統合を利用した効果的な語彙拡大法です。 3. 玩具のしまってある位置を一定にする。 ✅ 正しい。視覚に頼れない児童にとって、環境の一貫性・予測可能性は移動自由度と学習効率を高めます。自立性発達と問題行動低減に有効です。 4. 本児の靴箱にフェルトのマークをつける。 ✅ 正しい。触覚的識別マークは、全盲児の自分の物の認識と自立を支援する基本的適応策です。触って「これは自分の靴箱」と判別できるようになります。 5. 点字の学習を行う。 ❌ 誤り。言語基盤が極度に限定されている現段階では、音声言語の拡大が最優先です。点字導入の時期尚早であり、かえって学習負荷となる可能性があります。 --- 【試験対策ポイント】 視覚障害児の段階的言語発達支援 | 発達段階 | 優先的課題 | 適切な指導 | 不適切 | |---|---|---|---| | 超初期(語彙<10語) | 音声言語の土台形成 | 多感覚刺激、状況文脈連結、因果体験 | 点字導入 | | 初期(語彙10~100語) | 語彙の拡大、簡易概念形成 | 身近な対象の操作、音響フィードバック | 抽象的体系学習 | | 中期(語彙100語以上) | 概念的理解、文法基礎 | 物語、説話、基本文法指導 | 未熟な時期の点字導入 | | 後期(語彙500語以上) | 点字導入、読書活動 | 点字学習、識字活動 | × | 全盲児の学習指導における「段階性の原則」 ・現在の発達段階を正確に把握することが指導設計の出発点 ・本児は「状況依存的語彙数語」=着手段階直後 ・点字は「音声言語がある程度体系化した後」の補助手段として導入 ・時期尚早の点字学習は、むしろ音声言語発達を阻害する可能性
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