第20回 言語聴覚士国家試験 第78問
音声障害第20回
食道発声について正しいのはどれか。
- 1.[h]の産生は困難である ✓
- 2.声に抑揚はつけられない
- 3.発声に際し気管孔をふさぐ必要がある
- 4.電気式人工喉頭に比べ容易に習得できる
- 5.口腔内が陰圧になると食道に空気が取り込まれる
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — [h]の産生は困難である
食道発声は食道に取り込んだ空気を振動音源として利用する代替音声です。食道内で産生される音は低周波で、特に摩擦音([h][s][∫]など)を産生するために必要な口腔での高周波成分が得られにくいため、[h]音の産生は困難です。これは食道発声の重要な特性であり、試験頻出項目です。
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【各選択肢の解説】
1. [h]の産生は困難である
✅ 正しい。食道で産生される音は低周波振動であり、摩擦音[h]のような高周波成分が必要な音を産生することは困難です。食道発声の大きな制限の一つです。
2. 声に抑揚はつけられない
❌ 誤り。食道発声では、口腔および咽頭の形を変えることで、電気式人工喉頭と同様に抑揚や音声表現をある程度つけることができます。発話内容に応じた抑揚制御は可能です。
3. 発声に際し気管孔をふさぐ必要がある
❌ 誤り。気管孔は呼吸通路であり、食道発声時は気管孔を開放したままで発声します。気管孔をふさぐ必要はありません。むしろ呼吸管理の観点から気管孔は開放状態に保たれます。
4. 電気式人工喉頭に比べ容易に習得できる
❌ 誤り。食道発声は習得に要する時間が長く(数ヶ月~1年以上)、習得難度も高いです。電気式人工喉頭は比較的容易に習得でき、すぐに実用的な音声獲得が可能であり、この点で食道発声よりも優れています。
5. 口腔内が陰圧になると食道に空気が取り込まれる
❌ 誤り。食道に空気を取り込む機序は「口腔内の陰圧」ではなく、舌や咽頭の形を工夫して「食道内を陰圧にする」ことにより、下食道括約筋が弛緩して食道に空気が流入します。因果関係が逆です。
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【試験対策ポイント】
食道発声の特性
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 音源 | 食道内の空気の振動(低周波) |
| 適用対象 | 喉頭全摘患者 |
| 習得期間 | 3ヶ月~1年以上(長期) |
| 習得難度 | 高度 |
| 音質 | 低く・つぶれた音(低周波) |
| 抑揚 | つけられる(口咽頭形態変化で調節) |
| [h]音など摩擦音 | 産生困難(高周波が得られない) |
| 気管孔との関係 | ふさぐ必要なし |
| 空気取り込み | 食道内陰圧による(口腔陰圧ではない) |
電気式人工喉頭との比較
| 項目 | 食道発声 | 電気式人工喉頭 |
|---|---|---|
| 習得難度 | 高い | 低い |
| 習得期間 | 長い | 短い |
| 音質 | 低い・つぶれた | 高い・機械的 |
| 実用性までの時間 | 長期 | 短期 |
| 摩擦音産生 | 困難 | 比較的容易 |
頻出の誤りやすい点:
- 「気管孔をふさぐ」と誤解しやすい→実際には開放状態
- 「陰圧メカニズム」で口腔か食道かを混同しやすい→食道内の陰圧が正解
- 「困