第20回 言語聴覚士国家試験 第89問
小児聴覚障害第20回
遺伝性難聴について正しいのはどれか。
- 1.先天性難聴の約9割を占める。
- 2.非症候群性のものは進行しない。
- 3.特定薬剤の投与で発症するものがある。 ✓
- 4.ミトコンドリアDNA3242点変異は父親から遺伝する。
- 5.症候群性のものが非症候群性のものより患者数が多い。
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — 特定薬剤の投与で発症するものがある。
遺伝性難聴には、特定の薬剤(アミノグリコシド系抗生物質など)によって発症・悪化するものが存在します。特にミトコンドリア遺伝子変異を有する例が薬剤感受性難聴として知られており、環境因子(薬剤)と遺伝素因の相互作用で難聴が表現化する重要な臨床例です。
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【各選択肢の解説】
1. 先天性難聴の約9割を占める。
❌ 誤り。先天性難聴の約6割が非遺伝性(周産期感染・仮死・新生児黄疸など)で、約4割が遺伝性です。「約9割」は過度に高い数字です。
2. 非症候群性のものは進行しない。
❌ 誤り。非症候群性難聴の中にも進行性のものが多く存在します。例えば常染色体優性難聴(DFNA)や常染色体劣性難聴(DFNB)の一部は、加齢とともに聴力が低下します。「進行しない」という断定は誤りです。
3. 特定薬剤の投与で発症するものがある。
✅ 正しい。アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン・ゲンタマイシンなど)で発症・悪化する薬剤性難聴が存在します。特にミトコンドリアDNA変異1555A→G変異やその他の変異を有する個体は、これらの薬剤に高度に感受性を示し、永続的な難聴を生じます。臨床上極めて重要な知識です。
4. ミトコンドリアDNA3242点変異は父親から遺伝する。
❌ 誤り。ミトコンドリアDNAは母親のみから遺伝します(母系遺伝)。精子のミトコンドリアは受精時に分解されるため、父親からの遺伝は起こりません。ミトコンドリアDNA変異による難聴は典型的な母系遺伝パターンを示します。
5. 症候群性のものが非症候群性のものより患者数が多い。
❌ 誤り。遺伝性難聴全体では非症候群性(難聴のみ)が約7割を占め、症候群性(他臓器障害を伴う:Usher症候群・Pendred症候群など)は約3割です。患者数は非症候群性の方が圧倒的に多いです。
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【試験対策ポイント】
遺伝性難聴の頻度・分類
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 先天性難聴全体に占める遺伝性の割合 | 約40~45%(非遺伝性約55~60%) |
| 遺伝性難聴中で非症候群性の割合 | 約70~75%(症候群性約25~30%) |
常染色体劣性難聴(DFNB)
- GJB2遺伝子(コネクシン26):最多の原因遺伝子
- 進行性・非進行性の両者が存在
常染色体優性難聴(DFNA)
- 多くが進行性
- 年齢とともに高音域から聴力低下
ミトコンドリア遺伝性難聴(薬剤感受性難聴)
- 1555A→G変異、3243A→G変異、3342G→A変異など
- 母系遺伝(必ず)
- アミノグリコシド系薬剤で急速に悪化
- 臨床上「家族内に難聴者が複数」+「男女同程度」→ミトコンドリア遺伝を疑う
症候群性難聴の代表例
- Usher症