第20回 言語聴覚士国家試験 第96問
成人聴覚障害第20回
中等度難聴者のコミュニケーションの方略として適切でない指導はどれか。
- 1.聞き返す。
- 2.聞こえなかった場合にも場の雰囲気を壊さないようにうなづく。 ✓
- 3.筆談を求める。
- 4.話し手が言った言葉を繰り返して確認する。
- 5.話題のキーワードを確認する。
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — 聞こえなかった場合にも場の雰囲気を壊さないようにうなづく。
聞こえなかったまま場の雰囲気を維持することは、コミュニケーションの実質的な成立を放棄する行為です。中等度難聴者にとって最重要なコミュニケーション戦略は「聞こえない状況を相手に伝え、積極的に確認する」ことであり、曖昧な理解のまま進行することは誤解や孤立を招きます。
---
【各選択肢の解説】
1. 聞き返す。
✅ 正しい。難聴者の基本的かつ最も重要なコミュニケーション方略です。「もう一度お願いします」と明確に伝えることで、相手は話し方を調整(ゆっくり・大きく・明確に)でき、双方の理解が深まります。
2. 聞こえなかった場合にも場の雰囲気を壊さないようにうなづく。
❌ 誤り。これは受動的な「分かったふり」であり、実質的なコミュニケーションが成立していません。相手は「理解された」と誤認し、後に大きな誤解につながる危険があります。場の雰囲気よりも正確な意思疎通が優先されるべきです。
3. 筆談を求める。
✅ 正しい。音声が聞き取りにくい場合の代替手段として有効です。中等度難聴者でも文字情報なら正確に把握でき、重要な情報交換に適しています。
4. 話し手が言った言葉を繰り返して確認する。
✅ 正しい。確認的な繰り返しは難聴者による「理解確認」と相手による「説明内容の確認」の両方に機能します。齟齬がある場合、この時点で修正できます。
5. 話題のキーワードを確認する。
✅ 正しい。難聴者は断片的な情報からコンテクストを推測しているため、キーワード確認により全体文脈が把握しやすくなります。例:「今、何について話していますか?」という確認は極めて有効です。
---
【試験対策ポイント】
中等度難聴者のコミュニケーション戦略(正しい方略)
| 方略 | 効果 | 難聴者の心理負担 |
|---|---|---|
| 聞き返す | 相手が言い直す→聞き取り向上 | 低い(相手が努力) |
| 筆談 | 視覚情報で完全補捉 | 低い(確実) |
| 繰り返し確認 | 誤解を即座に修正 | 低い(確認機会) |
| キーワード確認 | 文脈理解が容易に | 低い(方向性が明確) |
| うなづく(分かったふり) | 表面的には円滑 | 高い(孤立・誤解リスク) |
重要否定知識:
- 「場の雰囲気」と「正確な理解」が対立する場合、理解を優先すべき
- 聞こえたふりは短期的には楽だが、長期的には信頼喪失につながる
- 難聴者が主導的に確認行動を取ることが自立的コミュニケーションの第一歩
頻出ポイント:
- コミュニケーション戦略=「相手に何ができるか」ではなく「難聴者が主体的に何をするか」
- 消極的な姿勢(黙認)vs 積極的な姿勢(確認)の対比問題として出題されやすい