第21回 言語聴覚士国家試験 第107問
小児科学第21回
フロッピーインファントについて正しいのはどれか。
a.先天性筋ジストロフィーは筋力低下が軽度である。
b.スカーフ徴候が陽性である。
c.ダウン症候群は筋力が保たれている。
d.脊髄性筋萎縮症I型は呼吸不全を早期に認める。
e.デュシェンヌ型筋ジストロフィーは乳児期の筋力低下で気付かれる。
1. a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — b,c,d
フロッピーインファント(floppy infant)は乳幼児期に筋緊張低下を主徴とする症候群です。その原因疾患の特徴を正確に理解することが重要です。正答はb,c,dであり、各疾患の筋力低下の程度・発症時期・重症度を区別する必要があります。
---
【各選択肢の解説】
a. 先天性筋ジストロフィーは筋力低下が軽度である
❌ 誤り。先天性筋ジストロフィー(先天性ミオパチーではなく、インテグリン異常を含む)は重度の筋力低下を呈し、出生直後から吸啜不全・呼吸困難を認めることが多いです。軽度ではありません。
b. スカーフ徴候が陽性である
✅ 正しい。スカーフ徴候(scarf sign)は筋緊張低下の指標で、肘を体正中線を越えて背中側に引き寄せられる程度を評価します。フロッピーインファントではこの徴候が陽性(正中線を超えて引き寄せられる)となります。
c. ダウン症候群は筋力が保たれている
✅ 正しい。ダウン症候群では筋緊張が低下(floppy)ですが、筋力自体は保たれています。これが他の神経筋疾患と区別される重要なポイントです。
d. 脊髄性筋萎縮症I型は呼吸不全を早期に認める
✅ 正しい。SMA I型(Werdnig-Hoffmann病)は最も重症で、生後6ヶ月以内に診断され、呼吸不全を早期(乳児期〜1歳以内)に認めます。代表的なフロッピーインファント原因疾患です。
e. デュシェンヌ型筋ジストロフィーは乳児期の筋力低下で気付かれる
❌ 誤り。DMDは通常3〜4歳で発症し、走行困難・転びやすさで気付かれます。乳児期には症状がないため、新生児スクリーニング対象外です。フロッピーインファントの原因になりません。
---
【試験対策ポイント】
フロッピーインファント 主要原因疾患の比較表
| 疾患 | 筋力 | 筋緊張 | 発症時期 | 呼吸症状 |
|---|---|---|---|---|
| SMA I型 | 低下(重度) | 低下 | 生後6ヶ月以内 | 早期呼吸不全 |
| 先天性筋ジストロフィー | 低下(重度) | 低下 | 出生直後 | 吸啜不全 |
| ダウン症候群 | 保持 | 低下 | 出生時 | なし |
| 脳性麻痺 | 低下 | 亢進(痙性)/低下 | 乳幼児期 | なし |
| DMD | 低下 | 通常~軽度低下 | 3~4歳 | なし |
重要な否定知識
- フロッピーインファント=「筋力低下」と「筋緊張低下」は同時に存在するとは限らない
- DMDは乳児期では無症状(乳幼児検診で筋力低下を指摘されない理由)
- ダウン症は筋緊張低下が顕著だが、筋力低下がない(筋疾患ではない)
スカーフ徴候・かかと耳徴候の判定
- スカーフ徴候陽性:肘が正中線を越えて背中側に到達
- 筋緊張低下の客観的指標として新生児評価で使用