STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第21回 言語聴覚士国家試験 第161問

高次脳機能障害第21回
損傷によってエピソード記憶の障害が起こらないのはどれか。
  1. 1.脳梁膨大後域
  2. 2.前脳基底部
  3. 3.視 床
  4. 4.海 馬
  5. 5.角 回 ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — 角 回 角回はエピソード記憶の貯蔵に直接関与せず、主に言語処理や読み書き機能に携わる領域です。一方、他の4つの構造はすべてエピソード記憶の形成・保持・想起に重要な役割を担っています。 --- 【各選択肢の解説】 1. 脳梁膨大後域 ❌ 誤り。脳梁膨大後域は海馬から新皮質への情報伝播経路の一部であり、エピソード記憶の形成と固定化に重要です。この部位の損傷により新しい出来事の記憶形成が障害されます。 2. 前脳基底部 ❌ 誤り。前脳基底部(バゼント核を含む)はアセチルコリン産生の中枢であり、注意・覚醒・記憶機能に不可欠です。この領域の損傷により、エピソード記憶の符号化と検索が障害されます。 3. 視床 ❌ 誤り。視床(特に外側背側核)は海馬と新皮質を結ぶ中継核として機能し、エピソード記憶の巻き戻し現象(リプレイ)に関与します。視床損傷によりエピソード記憶が障害されるリスクが高いです。 4. 海馬 ❌ 誤り。海馬は「エピソード記憶の形成の鍵」であり、側頭葉内側の最も重要な構造です。海馬損傷により、新規エピソード記憶の形成が著しく障害されます(H.M.症例が古典的)。 5. 角回 ✅ 正しい。角回は左側頭頭頂葉に位置し、主に言語処理(読み書き機能)、意味記憶の統合、視覚情報の言語への変換に関わります。エピソード記憶の形成・保持には直接的な役割を持ちません。 --- 【試験対策ポイント】 エピソード記憶と脳局在 | 脳領域 | 役割 | 損傷時の症状 | |---|---|---| | 海馬 | 記憶の形成(符号化) | 新規エピソード記憶の形成不全(前向性健忘) | | 乳頭体 | 記憶経路の中継 | Wernicke-Korsakoff症候群(逆向性+前向性健忘) | | 視床 | 海馬-皮質間の中継 | エピソード記憶の検索障害 | | 前脳基底部 | コリン作動系による覚醒・注意 | 記憶の符号化と検索の低下 | | 脳梁膨大後域 | 海馬から新皮質への情報伝播 | エピソード記憶の固定化障害 | | 角回 | 言語処理・意味記憶 | 失読失書、命名障害(エピソード記憶は保持) | 記憶の「ネットワーク」として見る: - 海馬が「記憶の中心」 - 視床・前脳基底部が「調節役」 - 脳梁膨大後域が「伝達経路」 - 角回は「言語側」で記憶と別系統 紛らわしい理由:角回も側頭葉に近い領域だが、言語野(ブローカ野・ウェルニッケ野)に近く、意味的処理には関わるが、エピソード記憶という「出来事の時間的文脈を含む記憶」の形成には直接関与しない。
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