第21回 言語聴覚士国家試験 第162問
高次脳機能障害第21回
前頭葉内側面の損傷で起こるのはどれか。
a.健 忘
b.把握反射
c.模倣行動
d.道順障害
e.接近行為
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — b,c
前頭葉内側面(特に眼窩前頭皮質や上内側前頭皮質)の損傷では、抑制機能や社会的行動制御が障害され、把握反射と模倣行動が特徴的に出現します。これらは脱抑制症状として患者の行動コントロール喪失を示す重要な所見です。
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【各選択肢の解説】
a. 健忘
❌ 誤り。健忘は前頭葉内側面ではなく、内側側頭葉(特に海馬)の損傷で起こります。記憶符号化・保持に関わる部位であり、前頭葉内側面の機能障害では健忘は一般的ではありません。
b. 把握反射
✅ 正しい。前頭葉内側面(特に運動皮質内側部や補足運動野周辺)の損傷で出現します。物に対する掴む反射が抑制されず、接近した物を不随意に掴んでしまう脱抑制症状です。
c. 模倣行動
✅ 正しい。前頭葉内側面損傷で見られる典型的な脱抑制症状です。検査者や周囲の動きを無意識に真似してしまい、自発的な行動制御ができなくなります。
d. 道順障害
❌ 誤り。道順障害(topographical disorientation)は頭頂葉後部や後頭葉、あるいは海馬を含む側頭葉の損傷で起こります。空間認知・地誌的記憶に関わる部位です。前頭葉内側面損傷の症状ではありません。
e. 接近行為
❌ 誤り。接近行為(utilization behavior)は前頭葉背外側面(特にDLPFC)の損傷で起こり、環境に提示された物品に不随意に反応してしまう症状です。前頭葉内側面ではなく、背外側面が関わります。
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【試験対策ポイント】
前頭葉部位別障害症状の整理
| 部位 | 代表的症状 | 機能喪失の性質 |
|---|---|---|
| 内側面(眼窩前頭皮質) | 把握反射、模倣行動、脱抑制 | 社会的行動制御喪失 |
| 背外側面(DLPFC) | 作動記憶障害、計画性喪失、接近行為 | 認知的自己制御喪失 |
| 運動皮質 | 片麻痺(対側) | 運動機能障害 |
| ブローカ野(下前頭回) | ブローカ失語 | 言語産出障害 |
脱抑制症状vs実行機能障害の区別
- 脱抑制症状(内側面損傷):不随意的・無制御的反応が出現
→ 把握反射、模倣行動
- 実行機能障害(背外側面損傷):計画・遂行能力の低下
→ 接近行為、作動記憶低下
頻出の誤り対象
- 接近行為:背外側面損傷である点を確実に区別
- 健忘:海馬・側頭葉内側面である点を確実に区別
- 道順障害:頭頂葉・側頭葉(地誌的記憶)である点を確実に区別