第21回 言語聴覚士国家試験 第193問
成人聴覚障害第21回
中途失聴の成人聴覚障害者について誤っているのはどれか。
- 1.難聴の程度が高度化するほど、音韻の異聴傾向は多様化する。
- 2.成人期発症では発話明瞭度は保持される。
- 3.難聴が高度で発症年齢が低いほど、発話の韻律的側面が平坦化する。
- 4.文節よりも音節ごとに区切って話された方が聴取しやすい。 ✓
- 5.社会的な孤立を招きやすい。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 文節よりも音節ごとに区切って話された方が聴取しやすい。
中途失聴者の聴取において、音節で区切ると音声の自然な流れや韻律(プロソディ)が失われるため、かえって聴取が困難になります。言語的な纏まり(文節単位)で話す方が、文法構造や意味の予測を利用できるため、聴取効率が良好です。
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【各選択肢の解説】
1. 難聴の程度が高度化するほど、音韻の異聴傾向は多様化する。
✅ 正しい。高度難聴では利用できる聴覚情報が制限されるため、異なる音として認識される音韻対が増加します。補聴器やCI装用後も異聴傾向が強く残ることがあります。
2. 成人期発症では発話明瞭度は保持される。
✅ 正しい。中途失聴者は既に音韻体系と音声運動パターンが確立しているため、聴覚フィードバック喪失後も発話明瞭度は比較的保持されます。小児失聴者と異なる重要な特徴です。
3. 難聴が高度で発症年齢が低いほど、発話の韻律的側面が平坦化する。
✅ 正しい。聴覚フィードバックが不足すると、音の抑揚・強弱・速度などの韻律制御が難しくなります。発症が早いほど音声運動パターン習得期に聴覚がないため、平坦で単調な発話になりやすい。
4. 文節よりも音節ごとに区切って話された方が聴取しやすい。
❌ 誤り。音節単位で分割されると、音声の韻律(イントネーション・アクセント)が破壊されるため、むしろ聴取が困難になります。文節単位の自然な発話の方が、文法情報や意味予測を活用できるため聴取しやすい。
5. 社会的な孤立を招きやすい。
✅ 正しい。中途失聴はコミュニケーション機能が急激に低下するため、職場・家庭・社会での人間関係が損なわれ、心理社会的な問題(抑うつ・孤立)に発展しやすい。リハビリテーションと心理支援が重要です。
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【試験対策ポイント】
中途失聴と先天失聴・先天ろうの比較:
| 項目 | 中途失聴 | 先天失聴・先天ろう |
|---|---|---|
| 発話明瞭度 | 保持される | 著しく低い |
| 音韻体系習得 | 既成・確立 | 未成立 |
| 韻律障害 | 軽度〜中程度 | 著明 |
| 聴取困難度 | 異聴傾向で増加 | 音声認識基盤から再構築が必要 |
| 社会心理的影響 | 孤立傾向が強い | 言語的背景あり対応が異なる |
重要な異聴傾向の知識:
- 高度難聴では利用できる周波数帯域が限定される
- 音韻的に近い音(例:/p/と/f/)の弁別が困難化
- 補聴器・CI装用後も長期的に異聴が残存することがある
「話しかけ方の工夫」での誤解を防ぐ:
- 音節分割→プロソディ破壊で聴取困難化(×)
- 文節単位・自然な速度→文法情報活用で聴取向上(○)
- 明確な発音+ゆっくり+視覚的補助(口話・筆談)が有効