STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第21回 言語聴覚士国家試験 第73問

言語発達障害学第21回
自閉症スペクトラム障害児への指導として適切でないのはどれか。
  1. 1.行先を写真や文字で知らせる。
  2. 2.「~してはいけない」ではなく「~しなさい」と教える。
  3. 3.「ちょっと待って」ではなく「~時まで待って」と伝える。
  4. 4.「相手の気持ちになってみて」と促す。 ✓
  5. 5.予定の変更は事前に知らせる。

正答:4番

解説
■ 正答:4番 — 「相手の気持ちになってみて」と促す。 自閉症スペクトラム障害(ASD)児の中核的特性は「社会的コミュニケーション障害」と「心の理論(Theory of Mind)の障害」です。心の理論とは、他者が自分と異なる信念・欲求・意図を持つことを理解する認知能力ですが、ASD児はこれが発達的に遅滞しているため、抽象的な「相手の気持ちになってみて」という指導は理解困難です。一方、1~3、5番は具体的・視覚的・構造化された環境設定であり、ASD児の強みと特性に適応した適切な支援方法です。 --- 【各選択肢の解説】 1. 行先を写真や文字で知らせる。 ✅ 正しい。ASD児は視覚的情報処理が比較的強く、抽象的な言語より具体的な視覚情報(スケジュール写真・視覚支援)を理解しやすい。これは構造化された環境設定の基本原則です。 2. 「~してはいけない」ではなく「~しなさい」と教える。 ✅ 正しい。ASD児は「否定的な指示」(~してはいけない)の抽象的理解が困難です。代わりに「やるべき行動を直接指示する」(正の行動支援)ことが効果的であり、これはASD児の認知スタイルに適応した方法です。 3. 「ちょっと待って」ではなく「~時まで待って」と伝える。 ✅ 正しい。ASD児は曖昧な時間概念(「ちょっと」)を理解しにくく、「10分まで」「3時まで」など具体的な終了時刻を示すことで見通しが立てられ、不安が軽減されます。これは「時間の可視化」という有効な支援です。 4. 「相手の気持ちになってみて」と促す。 ❌ 誤り。これはASD児の心の理論の発達段階では理解不可能な抽象的指導です。相互主観性(共有的心的状態)の理解が障害されているため、このような社会的推論を求めると混乱・挫折につながります。適切な支援ではありません。 5. 予定の変更は事前に知らせる。 ✅ 正しい。ASD児は「変化への対応困難」を特性として持つため、予定変更は予測不可能な刺激となります。事前通知により、心理的準備時間が得られ、不適応行動(パニック・強迫行動)を予防できます。これはトランジション支援の基本です。 --- 【試験対策ポイント】 ASD児への指導の基本原則 | 支援方法 | 理由 | 例 | |---|---|---| | 具体的・視覚的情報 | 抽象的言語理解の困難 | 写真カード・スケジュール | | 正の行動指示 | 否定的指示の理解が難しい | 「待ってね」→「3時まで待ってね」 | | 構造化された環境 | 不確実性への不安軽減 | 時間・場所・順序の明確化 | | 事前通知 | 変化への適応困難 | 予定変更を先に伝える | | 避けるべき指導 | 理由 | | 「気持ちになってみて」 | 心の理論の発達障害 | | 曖昧な時間指示「ちょっと」 | 時間概念の理解困難 | | 抽象的な社会的推論 | 相互主観性の欠如 | キーワード:心の理論(ToM)/ 構造化環境 / 視覚支援 / 変化への予測可能性
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