STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第21回 言語聴覚士国家試験 第79問

器質性構音障害第21回
舌癌に対する舌唖全摘術後の構音障害について正しいのはどれか。 a.代償構音訓練が適応となる。 b.構音訓練は障害の強い音から始める。 c.電気式人工喉頭が有効である d.日常会話に支障がない程度に改善することが多い。 e.拡大・代替コミュニケーション(AAC)を考慮する。 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:2番

解説
■ 正答:2番 — a,e 舌全摘術後は舌という重要な構音器官を失うため、本来の音声生成メカニズムの回復は困難です。そのため「代償構音訓練」により代替音声表現を獲得することと、音声出力が困難な状況に備えて「AAC」導入を検討することが標準的なアプローチとなります。 --- 【各選択肢の解説】 a. 代償構音訓練が適応となる。 ✅ 正しい。舌全摘術後は舌機能の回復が望めないため、他の構音器官(口唇・歯・硬口蓋など)を使用して音を代替する代償構音訓練が最も適切な訓練方法です。 b. 構音訓練は障害の強い音から始める。 ❌ 誤り。構音訓練は一般的に「獲得が容易な音から段階的に始める」が原則です。障害が強い音から始めると訓練効果が低く、患者の動機付けが損なわれます。易しい音の獲得が成功体験となり、段階的に困難な音へ進むべきです。 c. 電気式人工喉頭が有効である。 ❌ 誤り。電気式人工喉頭は「音声欠損」(喉頭全摘術など)に対する補助手段であり、舌全摘術後の「構音障害」には直接的な効果がありません。舌全摘術では喉頭は温存されているため、人工喉頭の適応ではありません。 d. 日常会話に支障がない程度に改善することが多い。 ❌ 誤り。舌全摘術後は舌という最も重要な構音器官を欠損しており、代償構音訓練を行っても「日常会話に支障がない」程度の改善は期待できません。実際には音声明瞭度の著しい低下が残存することが多いです。 e. 拡大・代替コミュニケーション(AAC)を考慮する。 ✅ 正しい。舌全摘術後の重度な構音障害では、音声による会話が困難になる可能性が高いため、文字・筆談・スピーチ出力装置などのAACの導入検討が重要な臨床課題です。患者のQOL維持のために欠かせません。 --- 【試験対策ポイント】 構音訓練の原則: - 易しい音 → 困難な音(段階的進行) - 強化・報酬による動機付け - 獲得した音を自動化・日常化へ 舌全摘術後の対応: | 手法 | 適応 | 理由 | |---|---|---| | 代償構音訓練 | ○ | 舌以外の器官で音を代替 | | 構音訓練 | ○限定的 | 完全な改善は困難も実施 | | 人工喉頭 | ✗ | 喉頭温存のため不適応 | | AAC | ○必須 | 音声コミュニケーション困難時の代替手段 | よくある誤解: - 器質性構音障害は「訓練すれば治る」わけではない - 欠損した器官の機能を完全に代替することは不可能 - AAC導入 = 諦めではなく、患者QOL向上の正当な選択肢
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