第21回 言語聴覚士国家試験 第83問
嚥下障害第21回
嚥下障害について誤っている組み合わせはどれか。
- 1.認知症 ― 先行期
- 2.顎関節症 ― 口腔準備期
- 3.舌癌後 ― 口腔期
- 4.一側性喉頭麻痺 ― 咽頭期
- 5.多発性硬化症 ― 食道期 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 多発性硬化症 ― 食道期
多発性硬化症(MS)は中枢神経系の脱髄疾患であり、脳幹や脊髄を侵す。食道の嚥下障害は、食道の平滑筋(内臓平滑筋)が侵された場合に起こるが、MSは脳や脊髄の白質病変が主体であり、食道平滑筋の一次的な障害は稀である。むしろMS患者の嚥下障害は咽頭期に生じることが一般的であり、選択肢の組み合わせとしては誤りである。
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【各選択肢の解説】
1. 認知症 ― 先行期
✅ 正しい。認知症では認知機能低下により、食事の準備や食べ物の認識など先行期の機能が障害される。食べ物が何かわからない、食事開始のタイミングが遅れるなど、嚥下が始まる前段階での問題が顕著に現れる。
2. 顎関節症 ― 口腔準備期
✅ 正しい。顎関節症は咀嚼筋や顎関節の障害であり、食物の咀嚼と舌による食塊形成を行う口腔準備期に直接影響する。咀嚼力低下や開口制限が現れる。
3. 舌癌後 ― 口腔期
✅ 正しい。舌癌後、特に舌切除術後は舌の運動機能が低下・喪失し、舌が食塊を咽頭へ移送する口腔移送期(狭義の口腔期)が最も障害される。食塊形成不全や咽頭への送り込み困難が生じる。
4. 一側性喉頭麻痺 ― 咽頭期
✅ 正しい。一側性喉頭麻痺(反回神経麻痺が最多原因)では声帯が動かなくなり、咽頭期の気道防護(喉頭挙上・声帯閉鎖)が不完全になる。その結果、誤嚥リスクが増加し咽頭期の嚥下機能が障害される。
5. 多発性硬化症 ― 食道期
❌ 誤り。多発性硬化症は中枢神経系(脳・脊髄)の脱髄疾患であり、食道平滑筋は直接侵されない。MSの嚥下障害は主として脳幹病変による咽頭期の障害(球麻痺様症状)として現れる。食道期の障害は起こりえない。
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【試験対策ポイント】
嚥下の5相と主要疾患の障害部位
| 嚥下の相 | 定義 | 主要障害疾患 |
|---|---|---|
| 先行期 | 食事の視認・認識・準備 | 認知症、視覚障害 |
| 口腔準備期 | 咀嚼・唾液分泌・食塊形成 | 顎関節症、パーキンソン病、ドライマウス |
| 口腔移送期 | 食塊を舌で咽頭へ移送 | 舌癌後、舌麻痺(舌神経障害) |
| **咽頭期(不随意)** | 気道防護・咽頭蠕動 | 一側性喉頭麻痺、球麻痺、脳梗塞 |
| 食道期 | 食道蠕動・下部食道括約筋弛緩 | 食道アカラシア、スクレロデルマ(平滑筋病変) |
重要:多発性硬化症は脱髄疾患で中枢神経系のみ侵す → 食道平滑筋障害は起こさない(末梢神経・平滑筋は保護される)
誤りやすいポイント