STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第22回 言語聴覚士国家試験 第41問

音響学第22回
子音の音響分析について誤っているのはどれか。
  1. 1.破裂音において破裂の時刻を基準に声帯振動の開始時刻までの時間を VOT(voice onset time)という。
  2. 2.鼻音の特徴として、低周波領域に強い周期性(鼻音マーマー)が観測される。
  3. 3.接近音ではフォルマントのゆっくりとした遷移が特徴的である。
  4. 4.無声歯茎摩擦音では4kHz以上に強い成分が現れる。
  5. 5.はじき音の持続時間は100msより長い。 ✓

正答:5番

解説
■ 正答:5番 — はじき音の持続時間は100msより長い。 はじき音(英語の[r]など)の持続時間は一般的に50~100ms程度であり、100msより長いという説明は誤りです。むしろ非常に短い持続時間が特徴です。他の4選択肢は音響音声学における子音分析の標準的で正確な知識です。 --- 【各選択肢の解説】 1. 破裂音において破裂の時刻を基準に声帯振動の開始時刻までの時間をVOT(voice onset time)という。 ✅ 正しい。VOTは音声学の基本的な概念で、破裂後から音声開始までの時間差を示します。言語による違い(英語のvoiced/voicelessの区別)を説明するために重要な指標です。 2. 鼻音の特徴として、低周波領域に強い周期性(鼻音マーマー)が観測される。 ✅ 正しい。鼻音は鼻腔を音響共鳴室として利用するため、特に低周波(500Hz以下)に周期的な強いエネルギーが集中します。この低周波の周期成分を「鼻音マーマー」と呼びます。 3. 接近音ではフォルマントのゆっくりとした遷移が特徴的である。 ✅ 正しい。接近音([w][j][l]など)は狭窄を形成しますが、破裂音ほど急激ではなく、フォルマントの遷移も徐々に行われます。この緩やかな遷移パターンが接近音の音響特性です。 4. 無声歯茎摩擦音では4kHz以上に強い成分が現れる。 ✅ 正しい。無声摩擦音は狭い狭窄での気流乱流により高周波成分が多く生じます。特に無声歯茎摩擦音[s]は4kHz~8kHzに最大エネルギーを持つことが多く、これが明瞭な「シ」という音の知覚につながります。 5. はじき音の持続時間は100msより長い。 ❌ 誤り。はじき音(lateral flap)の持続時間は50~100ms程度で、通常100msを超えません。むしろ短い持続時間が特徴であり、接近音(frictional/approximant)よりも短い傾向にあります。 --- 【試験対策ポイント】 子音の音響特性(重要な周波数帯域と時間) | 子音タイプ | 周波数特性 | 時間的特性 | 特徴的指標 | |---|---|---|---| | 破裂音 | バーストノイズ(0~5kHz) | 数ms程度 | VOT(破裂~音声開始) | | 摩擦音(無声) | 高周波強調(4kHz~) | 100~300ms | エネルギー集中位置で音の種類区別 | | 鼻音 | 低周波強調(500Hz以下) | 100~200ms | 鼻音マーマー | | 接近音 | フォルマント遷移 | 150~200ms | ゆっくりとした周波数変化 | | はじき音 | 低周波バースト | 50~100ms | 最も短い持続時間 | はじき音の重要否定知識: - 「100msより長い」は誤り→実際は50~100ms程度 - 弾音(tap)とも呼ばれ、反復音ではなく単一の短い接触・離断動作 - 摩擦を伴わないため無声摩擦音より短い VOTの言語別パターン: - 英語 voiceless stops(p/t/k):+20~50ms - 英語 voiced stops(b/d/g):-100~0ms - 日本語:弁別されない傾向
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