第22回 言語聴覚士国家試験 第64問
高次脳機能障害第22回
通常のアルツハイマー病で比較的早期から出現する言語症状はどれか。
a.漢字の書字障害
b.音韻性錯語
c.発語失行
d.語義失語
e.喚語障害
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — a,e(漢字の書字障害、喚語障害)
アルツハイマー病は神経変性疾患の中でも特徴的な言語症状パターンを示します。早期段階では意味的・認知的機能の低下が目立つため、喚語障害(語の検索困難)と書字障害が顕著に出現します。一方、音韻処理や構音能力の障害は比較的保持されるため、音韻性錯語や発語失行は早期には目立ちません。
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【各選択肢の解説】
a. 漢字の書字障害
✅ 正しい。アルツハイマー病では意味記憶の低下に伴い、漢字の字形や意味の想起が困難になります。特に低頻度漢字で顕著であり、ひらがなより漢字で障害が際立つことがアルツハイマー型認知症の特徴です。
b. 音韻性錯語
❌ 誤り。音韻性錯語(例:「りんご」を「りんご」と発話)は音韻体系の障害を示しており、アルツハイマー病の早期には現れません。むしろ前頭側頭型認知症(特に非流暢性原発性進行性失語)で見られます。
c. 発語失行
❌ 誤り。発語失行は構音計画の障害であり、運動皮質領域(左下前頭葉)の損傷で出現します。アルツハイマー病は海馬と頭頂側頭領域から始まるため、早期には発語失行は目立ちません。
d. 語義失語
❌ 誤り。語義失語は語の意味理解の障害を指しますが、これはより後期(進行中期〜晩期)に目立つようになります。また「語義失語」という用語はST国試では標準的分類ではなく、正確には「意味的認知障害」と表現されることが多いです。
e. 喚語障害
✅ 正しい。アルツハイマー病では語義記憶(一般知識・概念)の低下により、語を想起する際の困難が顕著に現れます。特に低頻度語や具体性の低い概念語の喚語障害は早期から検出でき、認知機能低下の敏感な指標となります。
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【試験対策ポイント】
アルツハイマー病と他の認知症の言語症状の違い
| 認知症タイプ | 早期言語症状 | 責任病変領域 |
|---|---|---|
| **アルツハイマー型** | 喚語障害、漢字書字障害 | 海馬→頭頂側頭葉 |
| **前頭側頭型** | 音韻性錯語、統語障害、音読障害 | 左下前頭葉・側頭葉 |
| **レビー小体型** | 比較的保持(言語障害は軽い) | 後頭葉優位 |
アルツハイマー病における言語障害の特徴
- 早期:喚語障害(名詞が出ない)、意味記憶低下
- 中期:統語理解障害、読み書き障害(漢字>ひらがな)
- 晩期:全般的失語状態、エコラリア、反響言語
頻出の誤選択理由
- c(発語失行)を選ぶ受験生が多いが、これは運動皮質障害の症状。アルツハイマー病では構音能力は比較的保持される
- d(語義失語):使用頻度の低い用語。実際には「意味的認知障害」という表現が標準的