第23回 言語聴覚士国家試験 第120問
聴覚系第23回
正しいのはどれか。
- 1.蝸牛の基底回転は低音域の音に関与する。
- 2.アブミ骨に付着する筋が収縮すると音の伝達は増幅される。
- 3.両耳に入る音の位相差は音の方向感覚に関与しない。
- 4.カロリックテストの定量的評価は眼振急速相を計測して行う。
- 5.内耳障害による眼振は明所開眼で抑制される。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 内耳障害による眼振は明所開眼で抑制される。
内耳前庭器官の障害によって生じる眼振は、注視によって抑制される「注視抑制可能な眼振」です。明所で注視すると、動眼神経核などの上位中枢が眼振を抑制するため、眼振振幅が減少します。一方、中枢性眼振(脳幹・小脳病変)は注視によって抑制されず、むしろ増強されることがあります。この違いは末梢前庭障害と中枢性障害を鑑別するために臨床的に重要です。
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【各選択肢の解説】
1. 蝸牛の基底回転は低音域の音に関与する。
❌ 誤り。蝸牛の基底回転は高音域、頂回転は低音域を担当します。音響周波数と蝸牛内の位置は「tonotopic organization」を示し、基底部ほど高周波、頂部ほど低周波に応答します。
2. アブミ骨に付着する筋が収縮すると音の伝達は増幅される。
❌ 誤り。アブミ骨に付着する筋は「アブミ骨筋」で、その収縮によって音の伝達は逆に「減衰」します。これは大きな音から内耳を保護する音響反射メカニズムの一部です。
3. 両耳に入る音の位相差は音の方向感覚に関与しない。
❌ 誤り。両耳に入る音の位相差(interaural time difference:ITD)は音の方向感覚に大きく関与します。左右耳の音到達時間差により、脳が音源の方向を判定します(両耳聴)。
4. カロリックテストの定量的評価は眼振急速相を計測して行う。
❌ 誤り。カロリックテストの定量的評価は眼振の「緩徐相速度」を計測して行います。急速相速度ではなく、前庭反応を反映する緩徐相速度を用いて前庭機能を評価します。
5. 内耳障害による眼振は明所開眼で抑制される。
✅ 正しい。末梢前庭障害(内耳病変)による眼振は注視により抑制される特性を持ちます。これは Fixation Suppression と呼ばれ、中枢の眼球運動制御系が上位から抑制をかけるためです。診断的価値が高い所見です。
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【試験対策ポイント】
末梢前庭障害 vs 中枢性眼振の鑑別
| 項目 | 末梢前庭障害 | 中枢性眼振 |
|---|---|---|
| 注視抑制 | 抑制される(消失) | 抑制されない・増強 |
| 垂直成分 | なし(水平回旋のみ) | あり(垂直・斜行) |
| 方向性 | 一定方向(患側向き) | 変動することあり |
| 眼振疲労 | あり(数日~数週) | なし(持続) |
| 聴覚症状 | 耳鳴・難聴伴うことあり | なし |
蝸牛の tonotopic organization
- 頂回転:低音(20~200 Hz)
- 中回転:中音(200~2,000 Hz)
- 基底回転:高音(2,000~20,000 Hz)
カロリックテスト重要項目
- 定量評価:緩徐相速度(slow phase velocity)を計測
- 正常範囲:20~100°/秒
- Jongkees公式:前庭反応の左右差を算出
音響反射メカニズム
- アブミ骨筋収縮:耳小骨系の可動性低下→高音の伝達を減衰
- 保護機能