STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第23回 言語聴覚士国家試験 第163問

高次脳機能障害第23回
半側空間無視について誤っているのはどれか。
  1. 1.視線を固定したときだけ出現する。 ✓
  2. 2.皮質下病巣でも出現する。
  3. 3.病識の欠如や乏しさがある。
  4. 4.空間性失書を生じる。
  5. 5.失読を生じる。

正答:1番

解説
■ 正答:1番 — 視線を固定したときだけ出現する。 半側空間無視は視線固定条件に限定されない障害です。むしろ注視方向や眼球運動の有無にかかわらず、患側空間への注意が障害されるため、自然な視線運動の中でも出現します。この問題は「いつ・どんな条件で出現するか」という半側空間無視の本質を問うています。 --- 【各選択肢の解説】 1. 視線を固定したときだけ出現する。 ❌ 誤り。半側空間無視は視線固定という条件に限定されません。自由視条件(眼球運動が許可される状態)でも、読書中・日常活動中など様々な場面で患側空間への注意が障害されます。むしろ視線固定によって初めて顕在化するのではなく、注意の本質的障害として常に潜在しています。 2. 皮質下病巣でも出現する。 ✅ 正しい。半側空間無視は右頭頂葉など皮質レベルの病巣が典型的ですが、視床や上丘などの皮質下構造の損傷でも出現することが報告されています。特に視覚情報処理や注意ネットワークの皮質下成分の障害によっても空間的注意障害が生じます。 3. 病識の欠如や乏しさがある。 ✅ 正しい。半側空間無視患者の多くは自らの障害に気づきません。検査で患側刺激を見落とすことや、日常生活での支障を認識しないことが特徴です。この病識欠如自体が治療・リハビリ効果を低下させる因子となります。 4. 空間性失書を生じる。 ✅ 正しい。半側空間無視患者は紙面の患側空間に書くことができず、中央部や健側に偏った記述となります。これが空間性失書(spatially distributed agraphia)で、運動機能障害ではなく注意障害に基づいています。 5. 失読を生じる。 ✅ 正しい。患側の文字が無視されるため、単語の左側が読めなくなります(例:「食事」が「事」に見える)。これは文字認識機能障害ではなく、患側への注意欠失に起因します。 --- 【試験対策ポイント】 半側空間無視の出現条件と症状 | 項目 | 特徴 | |---|---| | 定義 | 対側身体・環境への一側的な注意障害 | | 責任病巣 | 右頭頂葉(典型例) | | 皮質下出現 | あり(視床・上丘など) | | 視線条件 | 固定・自由いずれでも出現 ※1番の選択肢は誤り | | 病識 | 欠如・乏しい | 出現する具体的症状 - 読み書き:失読、空間性失書(患側文字が読み書きできない) - 日常生活:患側空間への衝突、食事で患側の食物を見落とし - 検査:線分二等分試験で健側寄り、線引き消去試験で患側を見落とし - 描画:描写した図の患側部分が欠落 よくある出題パターン 「~だけ」「~のみ」という限定的表現は注意。半側空間無視は条件依存的ではなく、注意の本質的障害であるため常に潜在しています。
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