第23回 言語聴覚士国家試験 第164問
言語発達学第23回
語彙獲得期の言語発達について誤っているのはどれか。
a.初期の語彙獲得は速やかであるため語の過大汎用がみられる。
b.語彙の意味の獲得には大人の意図を推測する語用論的能力が必要である。
c.大人が育児語を用いて働きかけることは語彙獲得を促進する。
d.物を指して「なに?」と質問するようになると語彙が急速に増加する。
e.ボキャブラリー・スパートの時期に増加するのは動詞が多い。
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:2番
解説
■ 正答:2番 — a,e
語彙獲得期の発達に関する誤った認識を問う問題です。aは「過大汎用は初期の語彙獲得時にはみられにくい」という誤り、eは「ボキャブラリー・スパートで増加するのは名詞が圧倒的に多い」という誤りです。この2つが誤りの選択肢です。
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【各選択肢の解説】
a. 初期の語彙獲得は速やかであるため語の過大汎用がみられる。
❌ 誤り。語彙獲得の初期段階では獲得語彙数が少なく、むしろ過少汎用(underextension:ある物を特定の個体にのみ適用)がみられます。語の過大汎用(overextension:「ワンワン」がすべての動物を指すなど、意味を広げすぎる現象)は初期語彙獲得段階では顕著ではなく、むしろ語彙が増加する過程で生じる一過的な現象です。
b. 語彙の意味の獲得には大人の意図を推測する語用論的能力が必要である。
✅ 正しい。子どもが新しい語を学ぶとき、「何をこの語で指しているのか」を理解するために、大人の指差しや視線、文脈から意図を推測する能力(語用論的推論)が重要です。これは語彙習得の基盤となります。
c. 大人が育児語を用いて働きかけることは語彙獲得を促進する。
✅ 正しい。マザリーズ(育児語:高い声、単純な文法、ゆっくりとした話速)は子どもの注意を引き、語彙習得を促進することが多くの研究で実証されています。
d. 物を指して「なに?」と質問するようになると語彙が急速に増加する。
✅ 正しい。18~24ヶ月ごろに出現する指差しと「なに?」質問は、意図的な語彙学習の開始を示す発達指標であり、この時期から語彙が急速に増加する傾向があります。
e. ボキャブラリー・スパートの時期に増加するのは動詞が多い。
❌ 誤り。ボキャブラリー・スパート(語彙爆発:18~24ヶ月前後で語彙が加速度的に増加する現象)で増加するのは圧倒的に名詞です。特に具体的な物の名前が主体となります。動詞の獲得は名詞より遅れ、より複雑な意味理解を要します。
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【試験対策ポイント】
語彙獲得の発達段階
| 段階 | 時期 | 特徴 | 語の性質 |
|---|---|---|---|
| 初期語彙 | 1語話し始め~1歳6ヶ月 | ゆっくり増加(月3~10語)| 過少汎用が目立つ |
| ボキャブラリー・スパート | 1歳6ヶ月~2歳 | 急速増加(名詞が中心)| 過大汎用が出現しやすい |
| 語彙拡大期 | 2歳以降 | 継続的増加 | 動詞・形容詞の増加 |
重要な否定知識
- 初期語彙獲得と「過大汎用」は別現象(混同しやすい)
- 「語彙爆発」=名詞増加(動詞ではない)
- マザリーズは有効(育児語が「良くない」とする古い認識は誤り)
キーワード整理
- 語用論的能力:大人の意図推測能力(語彙習得の基盤)
- 指差し質問「なに?」:18~24ヶ月の重要発達指標
- ボキ