第23回 言語聴覚士国家試験 第172問
言語発達障害学第23回
6歳3か月の男児。失調性低緊張のある脳性麻痺。主訴はコミュニケーションがとりにくい。遠城寺式乳幼児分析的発達検査法にて対人関係2歳、発語9か月、言語理解1歳9か月レベル。言語訓練プログラムの作成において優先度が低いのはどれか。
- 1.信頼関係の構築
- 2.やり取りの成立
- 3.身振りの増加
- 4.音声言語の理解
- 5.音声言語の表出 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 音声言語の表出
この児の発達段階が「発語9か月、言語理解1歳9か月」と、音声言語表出が著しく遅れているが、コミュニケーション機能の獲得という目標を達成するためには、より基盤となる対人相互作用や理解能力を優先的に指導する必要があります。失調性脳性麻痺による運動制御障害がある場合、音声言語の表出訓練単独では効率的でなく、まず非言語的コミュニケーション手段の確立と理解能力の向上が有効です。
---
【各選択肢の解説】
1. 信頼関係の構築
✅ 正しい。対人関係が2歳レベルと最も遅れているため、セラピストとの信頼関係構築はすべての言語訓練の基盤となります。これなしには児は訓練に参加しません。
2. やり取りの成立
✅ 正しい。コミュニケーションの本質は相互作用です。現在対人関係が2歳レベルの児にとって、指導者との簡単なやり取り(交互応答)の確立は、言語発達を促進する最優先事項です。
3. 身振りの増加
✅ 正しい。音声言語表出が困難な脳性麻痺児にとって、身振りやジェスチャーなどの非言語的手段は代替・補助的コミュニケーション手段として優先度が高いです。これにより相互作用が促進されます。
4. 音声言語の理解
✅ 正しい。言語理解が1歳9か月と発語より進んでいるものの、2歳台の理解レベルであり、さらに向上させることで表出を促しやすくなるため、優先度が高いです。
5. 音声言語の表出
❌ 優先度が低い。発語が9か月レベルで著しく遅れていますが、脳性麻痺の運動障害が基盤にあるため、運動機能の改善を伴わない音声言語表出訓練単独では効果が限定的です。むしろ理解・相互作用・非言語的手段を先行させるべき段階です。
---
【試験対策ポイント】
発達障害児への言語訓練の優先順位(下位から上位へ):
| 段階 | 内容 | この児での適用 |
|---|---|---|
| 1. 基盤形成 | 信頼関係、相互作用 | 対人関係2歳が最低基盤 |
| 2. 非言語的コミュニケーション | 身振り、指差し、アイコンタクト | 脳性麻痺児の代替手段 |
| 3. 理解の促進 | 言語理解の向上 | 言語理解1歳9か月を拡大 |
| 4. 表出の促進 | 音声言語表出 | 優先度最低(運動障害改善が前提) |
重要な否定知識:
- 脳性麻痺児の言語訓練は「音声言語の表出」から開始してはいけない
- 運動障害が基盤にある場合、発話訓練単独は無効
- 対人関係が2歳レベル=相互作用スキルの習得が急務
紛らわしい点の区別:
- 「発語9か月」=音声言語表出能力が低い → しかし訓練優先度が低いわけではなく、むしろ訓練方法を変える必要
- 「言語理解1歳9か月」=理解は発出より進んでいる → ここからの訓練展開が効果的