第23回 言語聴覚士国家試験 第184問
嚥下障害第23回
嚥下障害を呈する重症筋無力症患者にみられる所見として適切でないのはどれか。
- 1.咀嚼障害
- 2.鼻咽腔逆流
- 3.咽頭収縮不全
- 4.咽頭食物残留
- 5.舌の線維束性収縮 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 舌の線維束性収縮
重症筋無力症(MG)は神経筋接合部での神経伝達障害により、骨格筋全体の易疲労性と筋力低下が特徴です。嚥下に関わる筋肉も例外ではなく、咀嚼筋・咽頭筋・食道上部括約筋など随意筋が侵されます。しかし線維束性収縮は脱神経した筋肉(下位運動ニューロン障害)に見られる所見であり、MGのような神経筋接合部障害では生じません。
---
【各選択肢の解説】
1. 咀嚼障害
✅ 正しい。MGでは咀嚼筋(咬筋・側頭筋・翼突筋)の神経伝達が障害され、咀嚼筋力の低下と易疲労性が生じます。反復咀嚼により症状が悪化するのが特徴的です。
2. 鼻咽腔逆流
✅ 正しい。軟口蓋挙上筋(口蓋帆張筋・口蓋帆挙筋)の機能不全により、鼻咽腔閉鎖不全が生じ、液体が鼻に逆流します。
3. 咽頭収縮不全
✅ 正しい。咽頭収縮筋(咽頭上中下収縮筋)の神経伝達障害により、咽頭の蠕動運動が低下し、食物の咽頭通過が遅延します。
4. 咽頭食物残留
✅ 正しい。咽頭収縮力の低下により、食物が咽頭に残存しやすくなります。これは誤嚥のリスク因子になります。
5. 舌の線維束性収縮
❌ 誤り。線維束性収縮は脱神経筋(下位運動ニューロン損傷:球麻痺、ALS、ギラン・バレー症候群など)に見られる所見です。MGは神経筋接合部障害であり、神経支配は保持されているため線維束性収縮は出現しません。
---
【試験対策ポイント】
重症筋無力症の嚥下障害
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 病態 | 神経筋接合部でのアセチルコリン受容体障害 |
| 筋障害の種類 | 下位運動ニューロン障害ではない |
| 特異的所見 | 易疲労性(反復運動で悪化) |
| 線維束性収縮 | 出現しない |
線維束性収縮が見られる疾患
下位運動ニューロン障害系統:
- ALS(筋萎縮性側索硬化症)
- 進行性球麻痺
- ギラン・バレー症候群
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)
- ポリオ後症候群
MGで見られる嚥下困難の時系列パターン:
- 朝は比較的良好
- 昼から夕方にかけて悪化(易疲労性の典型)
- 氷水嚥下試験で一時的改善(寒冷で神経伝達改善)