第23回 言語聴覚士国家試験 第57問
失語症第23回
「体調はいかがですか?」という質問に対して「そうですか。いろいろありますけど、なんでもいいわけですから、それでしたらほかのひとでもだいじょうぶです。」と答えた。想定される失語症の症状はどれか。
a.語性錯語
b.統語の理解障害
c.語の意味理解障害
d.意味性ジャルゴン
e.新造語ジャルゴン
1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — c,d
患者の応答は「そうですか。いろいろありますけど、なんでもいいわけですから、それでしたらほかのひとでもだいじょうぶです。」となっており、文法的には流暢で新造語も見られない一方で、質問の内容とまったく関連のない内容を答えており、意味的な関連性が破綻しています。これはWernicke失語で特徴的な意味性ジャルゴン(semantic jargon)を示しており、同時に質問の意味を理解できていない語の意味理解障害を反映しています。
---
【各選択肢の解説】
a. 語性錯語
❌ 誤り。語性錯語は「ペン」を「ペンダント」など音韻的に関連する別の語に置き換える症状ですが、患者の応答には個別の語の置き換えエラーは見当たりません。むしろ文字通りの言語産出は保持されています。
b. 統語の理解障害
❌ 誤り。統語の理解障害(文法構造の理解困難)であれば、簡潔な文構造の質問は理解できる可能性があります。本症例の問題は文法理解よりも、質問の意味内容そのものの不理解です。
c. 語の意味理解障害
✅ 正しい。「体調はいかがですか?」という明確な質問に対し、関連性のない応答をしていることから、質問内容(意味)を正確に理解できていないことが明らかです。Wernicke失語の中核症状です。
d. 意味性ジャルゴン
✅ 正しい。患者の発話は文法的には正常で新造語もないが、質問との意味的関連性が完全に破綻しています。これは意味性ジャルゴンの定義(文法的には流暢だが意味的に無関係な内容)そのものです。
e. 新造語ジャルゴン
❌ 誤り。新造語ジャルゴンは造語や言葉の置き換え(「テレビ」→「テレテリ」など)が特徴ですが、本症例では造語が認められません。発話は既知の言語要素で構成されています。
---
【試験対策ポイント】
失語症における「ジャルゴン」の分類:
| 分類 | 特徴 | 典型症候 | 見られる失語症 |
|---|---|---|---|
| 新造語ジャルゴン | 文法的に流暢&造語あり | 「テレテリ」など造語 | Wernicke失語(重症)・全失語 |
| 意味性ジャルゴン | 文法的に流暢&既知語だが無関係 | 質問と関連ない応答 | Wernicke失語(典型) |
| 常同語 | 反復的な無意味な音の繰り返し | 「バババ...」 | 脳幹障害・重症後遺障害 |
Wernicke失語の3つの核症状:
- 流暢性:保持(むしろ過剰に話す)
- 理解:著しく不良
- 復唱:著しく不良
本問のキーワード:「文法的には流暢+意味は無関係」→意味性ジャルゴン