第23回 言語聴覚士国家試験 第82問
運動障害性構音障害第23回
舌亜全摘出術後の訓練・指導で正しいのはどれか。
a.構音状態を理解させる。
b.会話から訓練を開始する。
c.正常構音を目標とする。
d.舌圧子を用いて触覚を利用する。
e.残存舌の可動範囲を拡大させる。
1. a,b,c 2. a,b,e 3. a,d,e 4. b,c,d 5. c,d,e
正答:3番
解説
■ 正答:3番 — a,d,e
舌亜全摘出術後の訓練では、患者の現在の構音能力を正確に理解させたうえで、触覚フィードバック(舌圧子)を活用しながら残存舌の機能を最大限引き出すことが重要です。焦点は「正常構音の達成」ではなく「残存機能を活かした機能的コミュニケーション」にあります。
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【各選択肢の解説】
a. 構音状態を理解させる。
✅ 正しい。患者が自分の音声・構音の現状(どの音が不明瞭か、どの程度改善したか)を客観的に認識することは、訓練への動機付けと自主練習の効率化につながります。
b. 会話から訓練を開始する。
❌ 誤り。舌亜全摘出後は舌の大部分を喪失した状態で、基礎的な音韻操作(特に舌尖音・舌背音)が著しく困難です。会話は訓練の後期段階であり、初期は音節単位や単語レベルの構音練習から段階的に進める必要があります。
c. 正常構音を目標とする。
❌ 誤り。舌亜全摘出後は舌の再生不可能なため、正常構音の獲得は解剖学的に不可能です。現実的な目標は「聴者に理解可能な音声獲得」「機能的コミュニケーション」です。
d. 舌圧子を用いて触覚を利用する。
✅ 正しい。舌圧子で口腔内の残存舌・歯茎・口蓋を刺激することで、失われた舌の位置覚覚を補う触覚フィードバックが得られます。これにより代償的な調音位置の獲得を促進します。
e. 残存舌の可動範囲を拡大させる。
✅ 正しい。舌全摘でない限り、残存舌が存在します。その可動範囲と筋力を最大化することで、口蓋音や咽頭音など他の調音位置を有効活用した代償構音が可能になります。
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【試験対策ポイント】
運動障害性構音障害の訓練原則
| 項目 | 舌亜全摘出後 | 脳卒中片麻痺 | 小脳失調 |
|---|---|---|---|
| 初期目標 | 機能的会話 | 音韻操作訓練 | 調音速度制御 |
| 開始段階 | 音節・単語 | 音素・単語 | 母音から |
| フィードバック | 触覚(圧子) | 聴覚フィードバック | 視覚+聴覚 |
| 可能なこと | 残存舌の拡大 | 正常構音達成 | 明瞭度向上 |
舌亜全摘出後の重要否定知識
- 「正常構音」は目標とならない(解剖学的不可能)
- 「会話から開始」は誤り(積み上げ式訓練が必須)
- 「舌機能の完全回復」は望めない(代償戦略が主体)
頭頸部がん患者の音声言語訓練では「QOL向上」と「機能的コミュニケーション」が最優先です。