第24回 言語聴覚士国家試験 第166問
言語発達障害学第24回
文法の習得状況を評価するのに適切でないのはどれか。
- 1.動詞
- 2.語順
- 3.代名詞
- 4.慣用句 ✓
- 5.時制
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 慣用句
慣用句は「文法的規則の体系的な習得」ではなく、文化的・言語社会的背景に基づいた習慣的表現であるため、文法習得状況の評価には適さない。言語発達初期から中期における文法発達の中核は、言語規則の系統的習得であり、慣用句のような定着表現は文法習得を反映する指標にはならない。
---
【各選択肢の解説】
1. 動詞
✅ 正しい。動詞は「テンス・アスペクト・ムード」などの形態変化を伴い、文法習得の発達段階を反映する重要な指標である。動詞の活用形(過去形・進行形など)の出現順序は言語発達研究の中核項目。
2. 語順
✅ 正しい。語順(word order)は文法構造の基本であり、発達初期段階から「主語+述語」の順序習得が評価される。言語ごとの語順パターン(SVO・SOVなど)習得は文法発達の顕著なマーカー。
3. 代名詞
✅ 正しい。代名詞の習得(一人称・二人称・三人称、単複数の区別)は、子どもの社会的認識と文法体系の発達を示す。「I」「you」「he/she」などの習得順序は発達言語学の標準的評価項目。
4. 慣用句
❌ 誤り。慣用句(idiom)は「意味が非合成的」であり、個々の語彙の組み合わせ規則ではなく、社会文化的に定着した表現。「rain cats and dogs(土砂降り)」のような慣用句は、文法規則とは独立した「語彙化された単位」として機能するため、体系的な文法習得状況の評価には適さない。
5. 時制
✅ 正しい。時制(tense)は形態統語的に複雑な文法カテゴリーであり、習得順序の発達段階が明確(現在形→過去形→未来形など)。言語発達における文法習得度の重要な評価軸。
---
【試験対策ポイント】
【文法習得評価における重要区別】
| 評価対象 | 評価に適している理由 | 発達段階の指標 |
|---|---|---|
| 動詞 | 形態変化(テンス・アスペクト)で習得進度が明確 | 1.5~3歳で基本形、3~5歳で複雑な時制 |
| 語順 | 文構造の基本的規則性 | 1.5~2歳:語順の初期安定化 |
| 代名詞 | 社会的自己認識と結びつく体系的習得 | 2~3歳で格(主格vs目的格)区別 |
| 時制 | 複雑な形態統語規則の習得度を反映 | 発達段階ごとに習得順序が一貫 |
| **慣用句** | **❌ 意味が非合成的で文法規則から独立** | **社会文化的習慣に依存=文法指標ではない** |
【重要知識】
- 「文法習得の評価」=言語規則の系統的習得を測定する
- 慣用句は「語彙化された定着表現」=個別暗記の範疇
- 例:「頭が痛い」は「痛み」の具体的意味ではなく、「困った状態」を表す→文法規則の産物ではない
- 言語発達検査(PVT-Rなど)では「文法項目」として代名詞・時制・動詞活用を評価し、慣用句は含まない