第25回 言語聴覚士国家試験 第62問
高次脳機能障害第25回
誤っているのはどれか
- 1.道順障害では熟知した建物の外観の想起が障害される ✓
- 2.前脳基底損傷による健忘では作話を認める
- 3.観念運動失行は検査場面で顕在化する
- 4.脳梁離断症状としての失書は左手に生じる
- 5.行動障害型前頭側頭型認知症では脱抑制的な行動が早期にみられる
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 道順障害では熟知した建物の外観の想起が障害される
道順障害(トポグラフィック・ディスオリエンテーション)は、空間における方向感覚や経路認識の障害であり、主に頭頂葉や後側頭葉の損傷に伴います。熟知した建物の外観は意味記憶に属する知識であり、空間的位置関係の認識とは異なるため、この記述は誤りです。外観の想起自体は障害されません。
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【各選択肢の解説】
1. 道順障害では熟知した建物の外観の想起が障害される
❌ 誤り。道順障害は空間的な経路認識・方向感覚の障害であり、建物の外観という意味記憶の想起は原則として保たれます。頭頂葉や後側頭葉の空間認識関連領域の損傷で生じるもので、内側側頭葉損傷による健忘とは異なります。
2. 前脳基底損傷による健忘では作話を認める
✅ 正しい。前脳基底部(特に内側側頭葉)の損傷に伴う健忘では、記憶欠損を埋めるために作話(虚偽記憶や無意識的な記憶捏造)が顕著に認められます。これは前脳基底アルツハイマー病やコルサコフ症候群の典型的特徴です。
3. 観念運動失行は検査場面で顕在化する
✅ 正しい。観念運動失行は、認知的には行為を理解しているが運動実行に障害がある状態で、検査場面での命令実行(「バイバイをして」など)で明らかに低下が認められます。日常生活では習慣的実行で相対的に保たれることもあります。
4. 脳梁離断症状としての失書は左手に生じる
✅ 正しい。脳梁(特に膝部〜体部)離断では、左半球の言語支配領域からの情報が右半球に伝わらなくなります。そのため左手(右半球支配)での書字が著しく障害される(左手失書)という古典的な分離症状が生じます。
5. 行動障害型前頭側頭型認知症では脱抑制的な行動が早期にみられる
✅ 正しい。行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)では、前頭葉内側・眼窩前頭皮質の損傷により、脱抑制・欲動亢進・社会的ルール逸脱などの脱抑制的行動が疾患初期から顕著に認められることが特徴です。
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【試験対策ポイント】
| 概念 | 特徴 | 損傷部位 |
|---|---|---|
| **道順障害** | 空間的経路・方向感覚の障害/外観想起は保たれる | 頭頂葉・後側頭葉 |
| **前脳基底健忘** | 記憶欠損著明&作話顕著 | 内側側頭葉 |
| **観念運動失行** | 理解は良好だが実行障害/検査場面で顕在化 | 運動皮質・脳梁 |
| **脳梁離断症状** | 左手失書・左手命名困難 | 脳梁膝〜体部 |
| **bvFTD** | 脱抑制(早期)→認知症(後期) | 前頭葉内側 |
**紛らわしい点:**
- 「道順障害」と「熟知した情報の想起」は別概念→外観は記憶されている
- 「観念失行」との鑑別:観念失行は行為系列の認識自体が障害(コップで飲む順序がわからない)