STカコモン — 言語聴覚士国家試験 過去問・解説

第25回 言語聴覚士国家試験 第64問

高次脳機能障害第25回
前頭葉内側面のみの損傷で主に病巣と反対側の上肢に生じるのはどれか a.視覚性運動失調 b.把握反射 c.本能性把握反応 d.麻痺 e.利用行動 1. a,b 2. a,e 3. b,c 4. c,d 5. d,e

正答:3番

解説
■ 正答:3番 — b,c 前頭葉内側面の損傷は、運動皮質の補足運動野(SMA)ならびに損傷と反対側の上肢に対する抑制機能の喪失をもたらします。この部位の損傷では、特に把握反射と本能性把握反応という原始反射の脱抑制が生じます。これらは病巣と反対側の上肢に顕著に出現するため、正答は「b,c」です。 --- 【各選択肢の解説】 a. 視覚性運動失調 ❌ 誤り。視覚性運動失調は小脳や頭頂葉後部(視覚運動統合領域)の損傷で生じる症状で、前頭葉内側面損傷では出現しません。眼と手の協調障害とは異なるメカニズムです。 b. 把握反射 ✅ 正しい。前頭葉内側面(特にM1領域の下肢部近傍)損傷により、病巣反対側上肢に把握反射が脱抑制されて出現します。対掌反射とも呼ばれる原始反射で、手掌への刺激に不随意的に把握が起こります。 c. 本能性把握反応 ✅ 正しい。本能性把握反応(instinctive grasp reaction)は、物体が手に近づくと無意識に把握する反応で、前頭葉内側面(補足運動野周辺)の損傷で病巣反対側に出現します。自発的制御不可能な行動です。 d. 麻痺 ❌ 誤り。前頭葉内側面のみの損傷で古典的な麻痺は生じません。M1の内側面の損傷でも、片麻痺は出現しにくいとされています(補足運動野領域のため)。 e. 利用行動 ❌ 誤り。利用行動(utilization behavior)は前頭葉眼窩前頭皮質などの損傷で環境内の物体に無意識に引き寄せられる症状ですが、上肢限局的ではなく、より前方の領域(眼窩前頭野など)の損傷で生じます。 --- 【試験対策ポイント】 前頭葉内側面損傷の症候学 | 症状 | 病巣 | 特徴 | |---|---|---| | 把握反射 | M1内側面下部 | 手掌刺激で不随意把握、対掌反射 | | 本能性把握反応 | 補足運動野周辺 | 物が手に近づくと無意識把握 | | 利用行動 | 眼窩前頭野 | 環境内物体に全身で引き寄せられる | | SMA症候群 | 補足運動野 | 対側上肢の運動制御困難 | 原始反射脱抑制の原則 - 把握反射・本能性把握反応→高位運動皮質の抑制機能喪失 - いずれも「病巣反対側」に出現(交叉投射) - 脱抑制により「自発的に制御不可能」な特徴 対側出現のメカニズム - 脳の運動投射は90%以上が交叉する - 前頭葉内側面損傷→損傷側運動皮質の機能喪失→対側上肢コントロール喪失 重要な区別 - 視覚性運動失調:小脳/頭頂葉(視覚情報の運動統合障害) - 本能性把握反応:前頭葉内側(抑制機能の喪失)
関連

▶ 第25回 全問一覧

▶ 高次脳機能障害 の過去問一覧