第25回 言語聴覚士国家試験 第93問
小児聴覚障害第25回
難聴幼児のコミュニケーションパートナーの役割として適切でないのはどれか
- 1.行動の言語化
- 2.遊びの構造化
- 3.表現意欲の促進
- 4.単音の繰り返し模倣 ✓
- 5.言語表現のモデル提示
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 単音の繰り返し模倣
難聴幼児の言語発達支援では、コミュニケーションパートナー(通常は親や保育者)は「意味のある相互作用」を通じて発達を促すことが重要です。単音の繰り返し模倣は、音韻発達の初期段階を促す行為ですが、実際には構音訓練や音声学的アプローチであり、自然な遊びの中での言語化というコミュニケーション支援の基本理念から外れます。むしろ親子間の対話型相互作用、文脈的な言語提示が重視されるべきです。
---
【各選択肢の解説】
1. 行動の言語化
✅ 正しい。子どもの行動や経験に対して親や保育者が言葉でラベル付けすることで、言語と概念の結びつきが強化されます。これはParent Coaching(親指導)の基本原理です。
2. 遊びの構造化
✅ 正しい。遊びに段階的な目標や流れを設定することで、予測可能性が高まり、子どもの注意集中や参加意欲が向上します。難聴児には視覚的・文脈的手がかりが特に有効です。
3. 表現意欲の促進
✅ 正しい。開かれた質問、適切な沈黙の活用、子どもの試行錯誤への支援により、子ども自身から言語表現を引き出すことが言語発達の最大の促進因となります。
4. 単音の繰り返し模倣
❌ 誤り。単音の繰り返しは「音韻訓練」であり、構音障害の治療的介入に該当します。コミュニケーションパートナーの役割は治療ではなく、自然な会話の中での「モデル提示と相互作用」です。この選択肢は方法論が異なります。
5. 言語表現のモデル提示
✅ 正しい。子どもの発話をより正確で複雑な形に展開(拡張・リキャスト)して提示することで、暗黙的に正しい言語形式を習得させます(会話修復理論)。
---
【試験対策ポイント】
コミュニケーションパートナーの役割と治療的介入の区別
| 観点 | コミュニケーション支援 | 構音訓練・音韻指導 |
|---|---|---|
| 担い手 | 親、保育者、STが支援する親 | ST(言語聴覚士) |
| 場面 | 日常生活の遊びや会話 | 構造化された治療セッション |
| 方法 | モデル提示、行動の言語化、拡張 | 音韻弁別・正確な単音産出 |
| 目的 | 自然な言語発達を促す | 音韻体系の正確性獲得 |
キーワード:
- Parent Coaching:家庭での自然な相互作用を重視
- 言語化と拡張リキャスト:意味のある文脈の中での提示
- Hanen Itsy Bitsy Speech(HISB):親を通じた就学前難聴児言語支援プログラムの典型例
- 「繰り返し模倣」は音韻学的アプローチ→治療領域の方法論
紛らわしい理由:
「模倣」という言葉が、親子相互作用の中での自然な行為と混同されやすい。しかし「単音の繰り返し」という「構造化された音韻活動」は、言語発達支援ではなく構音治療の領域です。