第26回 言語聴覚士国家試験 第160問
高次脳機能障害第26回
純粋な健忘症候群の特徴でないのはどれか。
- 1.逆行性健忘を伴う。
- 2.潜在記憶が保たれる。
- 3.知的機能は保たれる。
- 4.即時記憶が障害される。 ✓
- 5.前向性健忘が持続する。
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 即時記憶が障害される。
純粋な健忘症候群では「即時記憶(ワーキングメモリ)は保たれる」ことが特徴です。健忘症候群は長期記憶の登録・保持・想起に障害が生じる状態ですが、短期保持機能である即時記憶は相対的に良好に保たれます。むしろ即時記憶の障害は前頭葉機能障害や注意障害を示唆し、純粋な健忘症候群ではみられません。
---
【各選択肢の解説】
1. 逆行性健忘を伴う。
✅ 正しい。健忘症候群では脳損傷前の記憶が消失する逆行性健忘がしばしば伴います。これは損傷部位や重症度により程度は異なりますが、典型的な特徴です。
2. 潜在記憶が保たれる。
✅ 正しい。健忘症候群では陳述記憶(エピソード記憶・意味記憶)が障害されますが、潜在記憶(手続き記憶など無意識的に習得される記憶)は保持されます。これが神経心理学的な健忘症の診断において重要な所見です。
3. 知的機能は保たれる。
✅ 正しい。健忘症候群は記憶機能に限定的に障害が生じる症候群であり、MMSE(ミニメンタルステイト検査)などでの全般的な認知機能スコアは保たれることが多いです。
4. 即時記憶が障害される。
❌ 誤り。即時記憶(数秒間の短期保持)は健忘症候群では通常保たれます。3~4桁の数字逆唱課題などが良好に遂行されることが診断基準となります。むしろ即時記憶が障害される場合は注意機能障害や前頭葉機能障害を示唆し、純粋な健忘症候群ではありません。
5. 前向性健忘が持続する。
✅ 正しい。脳損傷後に新しい情報を記憶できなくなる前向性健忘は、健忘症候群の典型的で持続的な特徴です。治療後も改善は限定的です。
---
【試験対策ポイント】
記憶の3段階モデル:
- 即時記憶(短期保持):数秒~数分 ⇒ 健忘症では「保たれる」
- 短期記憶(ワーキングメモリ):数分~数時間 ⇒ 健忘症では「障害される」
- 長期記憶(陳述記憶):数時間以上 ⇒ 健忘症では「著しく障害される」
健忘症候群の診断基準(保たれるもの):
- 即時記憶(3~4桁数字逆唱:正常)
- 潜在記憶(手続き学習・プライミング:保持)
- 知的機能(IQ・MMSE:保持)
- 注意機能(通常は良好)
健忘症候群で障害される記憶:
- 逆行性健忘:損傷前のエピソード記憶
- 前向性健忘:損傷後の新しい情報登録
頻出の紛らわしい概念:
- 即時記憶「障害」=注意機能障害・前頭葉機能障害の示唆
- 短期記憶と長期記憶の両者が「著しく低下」=純粋な健忘症候群